中学・高校・大学
過去問分析

Camp+では、各中学・高校・大学の過去問について、傾向と分析を詳細に解説しています。都立中・都立高を中心に最新の過去問を大問ごとに分類し、傾向が一目で分かります。


東京学芸大学附属国際中等教育学校

2022年〔適性検査Ⅰ〕

<出題形式>
2022年度の入試も例年と同様大問2問、小問16問と問題数の変更はありませんでした。

出題テーマ:海洋汚染と選挙方式を題材にした問題
【大問1】がプラスチックを題材にした理科系の問題、【大問2】が投票方式を題材にした算数系の問題でした。海洋汚染や平等問題など、SDGsを意識した問題と見ることもできます。記述式の問題が例年より少なくなり、代わりに記号で答える問題が多くなっていました。流れる水のはたらきや、もののとけかたなど、一部知識を求められる問題もありますが、図や表、グラフの数が例年より増えており、それらの読み取り問題の出来がカギを握ったといえるでしょう。問題のページ数も過去5年間で最多の12ページとなっていました。

〈各問題の分析〉
【大問1】
 環境問題など世界で課題となっていることに対して理科的に考察していく問題です。今年のテーマは「海洋プラスチック」をはじめとする、ごみの問題でした。地学や化学の分野の知識問題も数題出題されました。

[問題1]知識を使い考察する問題
大きさの異なる三種類のプラスチックのかけらが、川を流れてどのように積もっていくかを考える問題が出題されました。「流れる水のはたらき」の知識が必要な問題ですが、プラスチックのかけらの大きさの読み取りができれば容易に解くことができる問題でした。問1では河川を流れた先の海洋でも積もり方、問2では河川のカーブ部分における積もり方の考察でした。

[問題2]与えられたグラフを読み取り考察する問題
実験結果から得られたグラフをもとに考察する問題です。問1では与えられたグラフの読み取り、問2では結果から得られるグラフを選択する問題、問3ではグラフを用いて異なる条件下で実験を行った場合の結果を考察する問題でした。グラフからの割合週出も比較的容易にできる問題であったため、確実に正解したい問題でした。

[問題3]実験結果を読み取り考察する問題
プラスチック製品の一つとして発泡スチロールが提示され、そこから考察をしていくという問題です。問1で製品の際に使用される気体について考えた後、問2で実際に行った実験結果の表から分かることを考える問題でした。問1では問題文中に「石灰水に通すと白くにごりました。」という記載があるので、発生した気体が二酸化炭素であることがわかります。基礎的な知識問題であったので確実に正解しておきたい問題です。問2では一定量の食酢に重曹を0.5gずつ増やしながら、気体を発生させる実験を行っています。解け残りの有無から過不足なく反応する量を考察し、あてはまる選択肢を選ぶ問題でした。比例関係も読み取りやすいので、こちらも正解者が多かった問題だと考えられます。
【大問2】
身のまわりの様々な事象について算数的に考察していく問題です。今年は「生徒会」や「学校行事」をテーマに、投票での選出の仕方、トーナメント方式での決め方など論証系の問題でした。例年、求めるための式を書かせる問題が出題されますが今年度はありませんでした。

[問題1]与えられた資料・情報をつかい考察、処理する問題
生徒会選挙を題材にし、投票における複数の「決め方」から考えられることを考察していきます。小問数が6題と最も多くなっているのも特徴です。問1では割合の数値計算の問題も出題されています。確実に得点をしていきたいところです。この問題の中で多数決や配点方式など全部で5つの「決め方」が出されており、設問ごとに説明や得票数の表など多くの情報が書かれています。それらを早く正確に処理できるかどうかがポイントとなります。

[問題2]資料を読み取り考察する問題
[問題1]から引き続き、代表を1人に決める決め方について考察していきます。代表者を決める際にトーナメント方式はふさわしい方法ではないことを実際に確かめて検証していくという少し変わった問題になっています。5人の得票数の関係を、矢印を使って表した図を使って考察していきます。初めにこの図の読み取りが正しくできていないと問1~3の問題を解くことはできません。問1は与えられているトーナメント表に当てはまるのみなので容易に解くことができますが、問2と問3はトーナメントを自ら考えて答えなければいけないので、ここでも素早い処理能力が必要になってきます。

〔適性検査Ⅱ〕

<出題形式>
2021年度は大問1問、小問6問の構成でしたが、2022年度は大問1題、小問7題の構成でした。

出題テーマ:課題解決への取り組みと社会参画を題材にした問題
課題解決への取り組みと社会参画に関する問題で、ボランティア、衣服、人口減少など1つのテーマに絞られない形式での出題となっていました。適性検査Ⅰ同様、こちらも資源問題など随所にSDGsへの意識が見られる問題でした。2021年度は手紙やSNSなどのコミュニケーションツールを題材にした問題で、小問のテーマは比較的読み取りやすいものでしたので、題材としては難化したといえるかもしれません。

〈各問題の分析〉

[問題1]高校生世代の社会貢献に関する問題
2つの資料を読み取り、高校生世代の社会貢献に関して説明する問題です。問題文では、「高校生世代」となっていますが、資料では「15~19歳」jとなっている点に注意が必要でした。その点に注意できれば、他の年代と比較し、どのような傾向があるのかを述べることで解答を作成することができます。

[問題2]衣服を題材にした問題
(1) 衣服のマテリアルフローに関する資料から読み取れることを記号で選ぶ問題です。選択肢が与えられているので、選択肢と資料を照らし合わせて正答を出します。資料も選択肢の内容も平易であり、容易に読み取ることができるため、確実に正解したい問題です。
(2) 漫画を見て、衣料品業界の課題に関して説明する問題です。漫画には、女の子が流行ではない服を着ていて困っている様子が描かれています。その内容を(1)で使用した資料の内容と関連させます。漫画も資料も難しい内容ではありませんので、関連する内容を正確に読み取れば、解答を導き出すこともできます。

[問題3]海外での衣料品に関する調査を題材にした問題
2つのアンケート調査から分かることを説明する問題です。アンケート調査は衣料品を生産する会社が社会問題や環境問題に取り組むことを大切だと思うか、自分自身が衣料を購入するかどうか決める前に、社会や環境に与える影響を考慮するか、という二点について、世代ごとの解答の違いを確認できる資料です。一見、どのグラフも世代ごとの解答の差は小さくみえますが、問われていることが「傾向」ですから、一つ一つのグラフに着目するのではなく、複数のグラフに渡って読み取れる、他の世代と異なる点に着目すれば答えの方向性が見えてきます。資料5と資料6で全体的なグラフの形が異なっているのも、傾向を見やすくしてくれるヒントになりました。

[問題4]こども食堂を題材にした問題
(1) こども食堂に関する資料に出てくる運営者の“もやもや”の内容について読み取る問題でした。
(2) (1)で読み取った運営者の“もやもや”を解消するためにどのような姿勢や取り組みが必要なのかについて、資料から読み取る問題でした。

[問題5]人口減少と高齢化を題材にした問題
人口減少が進み、高齢化が進行している社会に若者が社会参画することについての意義を、4つの資料を使いながら説明する問題です。今年度も例年と同様に360字の記述形式となっていました。また、ここ数年でよく見られる全ての資料に触れて説明する形式でした。