Camp+では、各中学・高校・大学の過去問について、傾向と分析を詳細に解説しています。都立中・都立高を中心に最新の過去問を大問ごとに分類し、傾向が一目で分かります。
〈文章・出典〉
平松 正顕「ウソみたいな宇宙の話を大学の先生に解説してもらいました。」(一部改変)による
〈出題形式〉
3200字程度の文章が1題に読解問題が2問、作文問題1問の例年と変わらないスタイルでした。昨年度(約4000字程度)よりはやや字数が減りましたが、昨年度同様に作文の条件が示され、二段落で書く指定がありました。読解問題の字数は合計最大150字(昨年105字)、作文の最大字数が460字となり、読解問題の字数が昨年度よりやや増加しました。テーマは「天文学者による天の川銀河の観測結果からわかってきたこと」で、わかってきた新事実の結果から「先入観を持たずに」ものごとを見ることの大切さを説く内容となっています。「先入観にとらわれない」という内容は立川国際中の異なる文化を理解し、尊重するという「共生」の理念にもかなった内容で、受験生にとってはとらえやすい内容だったと言えます。
(問題1)指示語の内容を読み取る問題(60字以上70字以内)
「このような考え方」とはどのような考え方かという指示器の内容を読み取る問題です。直前に「そのパターンのなかに『私』を位置づけることで、『私』の行動を予測することがはじめて可能になるのです」とあり、この部分を利用することになりますが、「このパターン」の内容をこの段落の直前の段落にある「人間が好きなものには一定のパターンがあり、そのパターンを学習すれば、その人間の行動は予測できる」という部分とあわせてまとめることが肝要です。傍線部の前の段落だけに目がいってしまうと必要な内容をすべて盛り込むことができません。制限字数との関係で何を書くべきかを素早く決める必要がある問題でした。
(問題2)本文の表現の内容を問う問題(60字以上80字以内)
「周囲の銀河の分布まで考えに入れてみると、天の川銀河はかなり特殊なようですという表現について「天の川銀河」の「どのようなところ」が特殊だと述べているのかを問う問題でした。こちらも本文の直後に「不思議なことにローカル・シートの銀河は速度のばらつきがそれほど大きくありません。ただし、「周囲の銀河の分布まで考えに入れると」という表現があるので、本文後半の「私たちがいるローカル・シートの中には、天の川銀河の他に~と大きな渦巻銀河が3つも含まれている」という内容にも着目する必要があります。直後の表現に着目しただけでは完全正答とはなりません。設問の意図する内容について慎重に読み解く必要がありました。
(問題3)作文問題(400字以上460字以内)
本文で述べられている「重要な教訓」について「これまで自分たちのまわりが特別ではない」と仮定して宇宙を調べてきたが、もし「天の川銀河のまわりが特殊なのであれば、その仮定は間違った結論をもたらす」として、「先入観を持たずに宇宙と向き合うことが必要」と結んでいます。これらの内容をもとに、第一段落で筆者が「どのような姿勢で研究に取り組むのがよい」と述べているかをまとめ、さらに第二段落で「その姿勢を生かして学校生活で起こる課題をどのように解決していこうと思うか」を書く作文です。「先入観を持たずに向き合う」という内容がとらえられていれば、作文の方向性を大きく誤ることはないでしょう。「学校生活で起こる課題の解決」についても、「先入観を排除してものごとを素直に見つめる」ことといった内容を、「学級の話し合いの場面」「クラブ活動での場面」「友人関係での場面」などから選んで具体例として示すことができれば、大きくずれる内容にはならないはずです。設問の指示と、そのあとにある指示および注意を確実に読み落とさないようにまとめることが重要だったと言えます。
1⃣立体図形をテーマとした問題(共同作成問題)
〔問題1〕は、立体図形の展開図の面積を求める問題でした。〔問題2〕は、途中まで組み立ててある立体に2種類のブロックを使うことで、立方体を作る問題でした。例年との大きな違いは、大問を通して記述が無かったことです。代わりに、小数の計算や投影図の考え方などの算数の基礎的な力を必要とする出題となっており、計算力、空問把握能力が問われる問題でした。難度は昨年度と同等か、やや易化した形となりました。
〔問題1〕展開図から面積を求める問題
提示されている展開図と2人の会話から、展開図の面積を求める式と答えを出す問題でした。解くためのヒントは少ないものの、展開図から組み立てたときにどの辺とどの辺が重なるのか、円周率である3.14 を使った小数を含めた四則演算が正確にできるかがポイントです。面積を求めるための式と答えを出すといったシンプルな問題ではありますが、算数の基礎となる正確な計算力が必要となるため、日頃から小数のかけ算やわり算の演習を積むことで、早く正確に計算ができる力を養っておくとよいでしょう。
〔問題2〕立体を組み合わせることで立方体を作る問題
途中まで組み上げられている立体に、2種類のブロックをいくつか組み立てることで立方体を作る問題でした。一見、途中まで組み上げられている立体が複雑に見えますが、2種類のブロックのうち1種類しか合わない場所があるため、そのことに気づけたかどうかが正否の分かれ目となりました。図てから見た右の1列、正面の手前1列については1種類のブロックのみ組み合わせることができ、残りの8ヶ所を2種類のブロックで作る必要がありました。空いている形が複雑なところから埋めていくパズルに近い問題で、ブロックを埋めた後の形が正確にイメージできる、もしくは図にかくことができれば、解きやすい問題でした。
2⃣製品のリユースやリサイクルについて考える問題(共同作成)
令和3年度から引き続き小問2問の構成ですが、〔問題1]は、(1)と(2)に分かれており、(1)では割合の計算が出題されました。
共同作成問題の適性検査日大問2で割合の計算が出題されたのは、平成30年度以来です。大問全体の話題はリュースやリサイクルといった循環型社会に関するもので、受検生にとっては見慣れたテーマでしょう。また、会話文や資料は標準的で取り組みやすい内容であったため、2問とも正解するべき問といえます。解答に必要な要素を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現することが大切でした。
〔問題1〕割合を計算し、資料を比較して分析する問題
(1)は、図2または図3から選択した資料における循環利用率を計算したうえで、その結果が衣服の循環利用率と比較してどちらが高いかを答える問題でした。計算自体はどちらを選択しても3桁÷3桁と平易な割合の計算なので、確実に正解したい1問と言えます。ただし、ここでの選択は(2)にも関わるため、ただここを速く確実に解くだけでなく、そちらも見据えての選択をしておきたい1問でした。
(2)は、製品ごとの循環利用における特徴を比較し、共通点と異なる点を説明する問題でした。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、5年連続の出題となりました。問題の条件から、「ペットボトルと~の循環利用の共通点は~であり、異なる点は~である。」といった解答の枠を作り、必要な情報を読み取って完成させると解きやすいでしょう。共通点はペットボトル(図2)を選んでも、紙(図3)を選んでも自明ですが、異なる点は紙の方が答えやすかったため、(1)を解く時点で、こちらまで目を配っておく視野の広さがある受検生は、多少なりここで時問を節約できたでしょう。
〔問題2〕複数の資料を組み合わせて説明する問題
衣服の循環利用率を高める取り組みによって、消費者の意識や行動がどのように変化して循環利用率が高まるのかを説明する問題でした。[問題1](2)と同様に、解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は6年連統の出題となりました。この問題を正解する一番のポイントは、花子さんの「循環利用率を高める意識や行動もあれば、そうでないものもあります。」というセリフです。この観点で図4、図5、図6を見ると、無計画な服の購入、まだ着られる衣服を可燃ごみとして捨ててしまう、などが「そうでない」意識や行動であることが分かります。そして、その上でカードを見ると、そういった問題点を改善し、図4、図5、図6の「循環利用率を高める意識や行動」に当たるものへ導いていることが分かります。例年通りの都立中適性検査文系の、セオリー通りの解法が身についているか否かで正否が分かれる一問でした。
3⃣シャボン玉の性質について考える問題(共同作成問題)
近年の傾向通りの問題でしたが、例年よりも会話文が少なくなり、実験の手順の説明が詳細化されました。問題文中の表現も含めると、これまでであれば実験結果の着眼点を示唆するだけであったものが、それに加えて検証の仕方まで示唆されるものとなっており、大幅に解きやすくなったと言えます。しかし、思い込みなしに丁寧に問題文を読み取らないと、読み取り方が問違いやすい箇所があり、落ち着いて処理できたかどうかが重要でした。共同作成の適性検査山は、算数系の大問1の方が難度の高い年度と、理科系の大問3の方が難度の高い年度があります。今年度は解答の記述量の面で、大問3の方が難度が高かったと言えるでしょう。適性検査全体の難度が例年よりも易化したことと合わせて考えると、学校によっては合否の決め手となる大問と言えます。なお、シャボン玉とその体積、割れ方などを題材とした問題は後期日曜特訓第14回の適性検査I大問3と同一でした。このため、enaの後期日曜特訓を受講している多くの受検生は、大変取り組みやすい問題だったと言えます。
〔問題1〕シャボン玉の割れやすさに関する問題
シャボン玉は砂糖水から作ると割れにくい、ということについて、望ましい濃度を探る実験についての問題でした。食器用洗前、濃度、などのキーワードは、令和4年度の問題を考様させます。あくまで題材の近さであり、問われているものは異なりますが、問われているものを正しく読み取ると、実は令和6年度の(問題1)ととても似ています。条件を1つ変化させた実験2つの結果をふまえて答えを出す、結果をただまとめるだけでなく、その内容を換言する一手問がある、という特徴が踏題されています。そのため、近年の過去開をしっかり解きこんでいった受検生にとっては解きやすい一問でしたが、完全に正解した受検生はそこまで多くないと思われます。鍵となるのは前述の「換言」で、問われているのはシャボン玉の「体様」の比較ですが、資料には体積ではなく、空気入れを押した回数がまとめられています。「回数が多い→シャボン玉に入れられた空気が多い→体積が大きい」という置き換えを正しく説明しきれているかどうかが記述のポイントになります。こういった問題で点数を取り切れるように、過去問の演習をする際には、ただその問題を例題として扱うのではなく、肝となる部分はどこか、を意識して行うとよいでしょう。
〔問題2〕シャボン玉の時問経過による割れ方に関する問題
時問経過により、シャボン玉のまくをつくる液が徐々に下部にたまっていき、薄くなった上部から割れていくことについての実験結果の考察を答える問題です。実験の手順と結果は大変分かりやすく示されており、結果に対しての考察の検証をする実験まで行っていますから、現象についての理解は平易でした。そのため、この問題における得点の差は、問題文の条件通りに解答を作ることができているかどうかによるものが大きいでしょう。適性検査の問題文としての正しい読み取り方をすると、解答には4つの要素を入れなければなりません。それを正しい言語表現でまとめられたかどうかが重要でした。特に、前述の日曜特訓の問題で、現象(時問経過により、シャボン玉の液が下へいくことで、上部がうすくなり割れる)について問うほぼ同一のものを経験していますから、enaで日曜特訓を受講している受検生には特に解きやすい一問であったと言えます。
〈文章・出典〉
戸谷 洋志『SNSの哲学 リアルとオンラインのあいだ』(創元社)
〈出題形式〉
4000字程度の文章が1題の形式で、読解問題2間、作文問題1間の例年と変わらないスタイルですが、前年度に比べて文章量は2倍近く増えました。また、ここ2年姿を消していた作文の条件指定が再登場しました。読解問題の字数は合計最大105字、作文の最大字数が460字となり、昨年よりは書く分量がやや減少した形です。テーマは「インターネット上で個人の好みに合った情報が自動的に選択される仕組み」についての説明と生命の予見不可能な存在であることを対比させて「人間は予見不可能な創造的 進化を遂げる」ものであることを述べています。SNSなどで同じ動画を見ても、それぞれの感じ方は個性によって異なるという筆者の考え方がとらえることができれば難しい内容ではありません。
(問題1)指示語の内容を読み取る問題(60字以上70字以内)
「このような考え方」とはどのような考え方かという指示器の内容を読み取る問題です。直前に「そのパターンのなかに『私』を位置づけることで、『私』の行動を予測することがはじめて可能になるのです」とあり、この部分を利用することになりますが、「このパターン」の内容をこの段落の直前の段落にある「人間が好きなものには一定のパターンがあり、そのパターンを学習すれば、その人間の行動は予測できる」という部分とあわせてまとめることが肝要です。傍線部の前の段落だけに目がいってしまうと必要な内容をすべて盛り込むことができません。制限字数との関係で何を書くべきかを素早く決める必要がある問題でした。
(問題2)本文の表現の内容を問う問題(25字以上35字以内)
「具体的な姿を捉える」とは世界をどのように見ることかを本文の表現をもとに言い換える問題です。修線節では「そうした説明は~その具体的な姿を提えることにはなりません」と書かれており、「そうした説明」では「具体的な姿を捉える」ことにはならないので、「抽象的に読めてなされるもの」ではない内容が解答となります。この段落の直後に「具体的に読める」とあり、この内容を説明している部分を攻していきます。その内容には「あるできごとが予見不可能である」「家然に起こる」ということが示されているので、これにあわせて解答をまとめます。半数が短いので前途のキーワードを入れて解答を作炊することと、その後にある「人間」の事例が「創造的進化」という表現でおべられており、皮質に関気は探いものの「人間」という限定的なものを扱っているため、この解答に盛り込むのにはふさわしくないことに気づく必要があります。
(問題3)作文問題(400字以上460字以内)
書くべき内容は「人間はどのような存在であると述べられているか」「筆者の考えを学校生活においてどのように生かせるか」の2点です。条件と注意にしたがって書けばよいので、受検生にとっては取り組みやすいと感じられたと思います。 最初の「人間はどのような存在であるか」はベルクソンの言葉を引用した文章の後半部分に「人間はあくまでも生命であり、単なるモノではない」とあり、「生命である以上」「予見不可能な創造的進化を逃げる」とあります。また、その後の段落に「時間の経過が私たちの存在を、常に新しいもの、別なものに変えていく」とある点にも注目して、「人間は単なるモノではなく、時間の経過によって新しいもの、別なものに進化する予見不可能な創造的進化を遂げる存在」という形でまとめることができます。 一方、この考え方を学校生活の具体的な場面を挙げて考える必要があります。ここでは「時間の経過によって、新しいもの、別なものに変わること」「予見不可能な創造的進化を遂げる」などの面から、場面を想定します。「学校生活の中で毎日あいさつをする場面」によって「前の日にはいやなことがあって落ち込んでいた気持ちも翌日にはあいさつをすることで前向きになれる」など具体的な場面をいかに思いつくことができるかがポイントです。
1⃣ デジタル数字を題材にした問題(共同作成問題)
1⃣は前年同様小問2題のシンプルな構成でした。どちらの問題もデジタル数字を題材としたパズル要素の強いものとなっています。条件に合わせて考える力が必要でした。全体的にここ数年の中では取り組みやすい難易度となっています。
〔問題1〕条件に合う作業の分担方法を考える問題
マグネットシートから棒状のマグネットを切り取り必要な個数をつくる問題です。花子さんと太郎さんで「かく」作業と「切る」作業を分担して行い、45分未満ですべての作業を終わらせます。作業する人によってかかる時間が違うので、どう組み合わせるべきなのか当たりをつけて解き進める必要があります。太郎さんはマグネットシート1枚当たり「かく」作業に10分、「切る」作業に5分かかり、花子さんは「かく」作業も「切る」作業もマグネットシート1枚当たり7分かかります。問題文の条件より、最初の作業は同時に始めないといけないため、最初の作業は二人とも「かく」作業になります。その後は、「かく」作業が太郎さんより速い花子さんはずっと「かく」作業を、「切る」作業が速い太郎さんはずっと「切る」作業を、という風に分担すれば45分未満で作業を終えることができます。ルールをきちんと把握していれば、記述する内容も単純なので、比較的得点しやすい問題でした。
〔問題2〕最短時間で操作を完了させる方法を考える問題
ルールに従って、指定された3けたのデジタル数字を最短時間で作る方法を考える問題です。「マグネットをつける操作(2秒)」「マグネットを取る操作(2秒)」「数字の書かれたポードを180度回す換作(3秒)」「2枚のボードを入れかえる操作(3秒)」を組み合わせて考えます。本間では456から987にする場合が問われています。回転と入れかえはそれぞれる秒かかってしまうものの、入れかえを行わずに456を987にすることを考えると、どうしても時間がかかってしまいます。したがって、できるだけ効率の良い手順で入れかえを行う必要があります。会議文で6を回転させると9になることが説明されているので、6を回転させて9にしてから4と入れかえ、4を7にすることを考えます。真ん中の5はマグネットを2本加えれば8にできます。しかしこれが「最短」の方法であることを確かめようと思うと時間がかかりますので、確実に得点するという観点で言うとやや離しい問題だったように思われます。
2⃣ 公共交通機関の利用について考える問題
令和3年度から引き続き小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。大問全体の話題は、令和3年度から令和5年度までは3年連続で日本の産業を題材にした内容だったのに対し、今年度は令和2年度と同様に公共交通機関を題材にした内容となっていました。会話文や資料は過年度の適性検査問題と比較しても標準的な内容であり、設問も解答の見当をつけやすいため平易な問題といえます。解答の根拠になる部分を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現する力をみられる問題でした。
〔問題1〕グラフが示す数値の根拠を考察する問題
公共交通機関の利用客が航空機または鉄道に偏っている理由を、表1の所要時間と料金の観点から考察する問題です。解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は、5年連続の出題となりました。図1より、AからBへの移動には航空機と鉄道がほぼ同じ割合で利用されているのに対し、AからCへの移動には航空機の利用合が非常に高く、AからDへの移動には鉄道の利用制合が非常に高いことが読み取れます。また、表1には、航空機と鉄道それぞれを利用して移動した場合の所要時間と料金が移動経路ごとに示されています。これらを関速させて考えると、人びとが公共交通機関を利用するときは、公共交通機関ごとの所要時間および料金の差をふまえて選択していると予想できます。なお、AからCとAからDはどちらを選択しても正解です。ただし、問題の条件より、いずれの場合もAからBの公共交通機関の利用割合と比べながら解答する必要があることに注意してください。問われていることもふまえて考えると、解答の若き方は「AからBの公共交通機関の利用合は~になっているのに対して、AからC(またはAからD)の公共交通機関の利用合は~になっている。その理由は、~からと考えられる。」といった表現が考えられるでしょう。
〔問題2〕複数の資料を組み合わせて説明する問題
「ふれあいタクシー」を導入することになった理由と、その効果について考えられることを、複数の資料と会話文から読み取って説明する問題です。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、4年連続の出題となりました。ただし、今年度は理由と効果を書く解答欄が分かれている形式の解答用紙だったため、受検生は例年と比較すると問いに正対して解答しやすかったものと思われます。会話文から、E町では路線バスの運行本数が減少しているなかで「ふれあいタクシー」を導入したことがわかります。また、利用者の90%近くが「ふれあいタクシー」に満足していることがわかります。これらの情報をもとにして、問題で指定された4種類の資料から読み取れる内容を、過不足なく組み込みながら説明するようにしましょう。今回は、表2、図2、表3が、それぞれの項目の推移を示す資料となっています。推移を読み取るときは、数値の大まかな変化の過程を読み取ることがポイントです。
3⃣ 摩擦に関する実験を題材とした問題
3⃣は、ここ3年は、小問2つにそれぞれ枝問が2つあり合計4問、という構成でした。しかし今年度は枝問が1つずつになり、合計2問構成となりました。実験の内容自体も比較的素直で読み取りやすいため、ここ数年では最も取り組みやすい難易度だったと言えます。題材としては、旅に関して調べる実験を行い、その結果を分析する問題でした。計算を必要とする問題はなくなり、読解力・考察力・記述力が試される構成となりました。どちらの問題も、内容理解はそれほど難しくないため、平均点は高くなると考えられます。しかし、満点解答を出すうえでは、問題で問われている内容を過不足なく盛り込んで解答する、答案作成力が必要な問題でした。
〔問題1〕素材の表面の状態の違いによる摩擦の大きさの違いを考える問題
ペットボトルのキャップにつけられたみぞの摩擦による効果を、モデル化して調べた実験についての問題です。実験の結果から、表面にみぞをつけることで、手でキャップを回すときにすべりにくくなると考えられる理由を説明する問題でした。ペットボトルのキャップを回すときのように、みぞの方向と力の方向が垂直なときには、動き出すのに必要なおもりの個数が多いことが、実験結果からわかります。 これが、ペットボトルのキャップを回すことを考えると、すべりにくいということに相当します。また、問題では「手でつかむ力が大きいときでも小さいときでも」とありますので、載せる金属の重さが 750g の場合と 1000gの場合の両方について記逃する必要があったと考えられます。このように、「手でつかむ力」を「のせる金属の重さ」に、「表面のみぞの方向が回す方向に対して垂直であるペットボトルのキャップ」を「糸に対して垂直にみぞをつけたプラスチックの板」に、「すべりにくさ」を「おもりの個数」に、それぞれモデル化した実験が行われていることを理解する必要がありました。
〔問題2〕斜面をすべり下りる物体の速さの違いを考える問題
会話文から、斜面をすべり下りる物体の速さについて、「物体が斜面に接する面積」、「物体の重さ」、「斜面に接する物体の素材」の3つの観点が挙げられ、これらの条件によってすべり下りる速さがどう変わるかを調べる実験についての問題です。6通りの条件で斜面をすべり下りるのにかかる時間を調べた実験の一部が隠されており、その中から結果が同じであると予想できる組み合わせを選び、そう考えた理由を説明する問題でした。この設問に対しての実験は2つ行われていますが、両方を通して、複数の条件によって変わる実験結果を考察する必要があります。そのため、対照実験の考えを用いた実験結果の読み取りと客作成が必要な問題でした。「実験2では同じでなかった条件のうち実験3では同じにした条件」については、そのことを意識して実験手順を読み取れば、「物体の重さ」であること自体は分かりやすいです。あとは、明らかになっている結果のうち、「斜面に接する物体の素材」が同じ場合には、すべり下りる時間も同じになっていることが分かれば、結果が同じになる組み合わせを選ぶことは、比較的やりやすかったと言えます。答案作成においても、「実験2では同じでなかった条件のうち実験3では同じにした条件は何であるかを示して」という指示を意識することが重要でした。
2000字程度の文章が1題の形式 で、読解問題2題、作文1題の例年と変わらない出題です。
作文については前年度同様、設問の中に条件を記載する形で出題されました。 また、読解問題の総字数は最大125字、作文が最大500字で、読解問題の字数は前年度と変化はないものの、作文の字数が前年度より100字多くなりました。
テーマは「自然破壊と自然保護」 に関するもの で、前半は 「なぜ自然を守らなければならないのか」ということについて2つの立場を示した上で筆者の見解を述べ、後半は 「自然破壊」 の意味とそれに対する「自然保護」のあり方について筆者の意見が示されています。 文章自体は読みやすく、わかりやすいものですが、作文の設問について具体例を思い浮かべるのが難しかったと考えられます。 「学校生活」 「リーダー」「目標達成」 という細かい条件がきちんと読み取れたかが重要です。いずれにしても具体例を示すポイントを細かくとらえられ ているかが作文の問題の得点のカギとなると考えられます。
大問3題小間6構成です。前年度同様に、[大問1]は質数分野、[大問2]は社会分野、[大問3]理科分野からの出題でした。
[大問1]は、プログラム通りに動くロボットの移動経路を考える問題や、複数のスイッチを押したときに起こる変化を考える問題など、条件に合わせて考える力が必要な問題でした。適性検査の理系としては頻出の内容です。非常に難易度が高かった前年度に比べると落ち着いたものの、依然として文章量・作業量ともに多く、45分の中で解き切るには十分な準備が必要でした。
[大問2]は、前年度、前々年度と同様に小問2題の構成で、計質問題は出題されませんでした。大問全体の話題も引き続き日本の産業について考える内容でしたが、前々年度と前年度は第1次産業を中心とした内容だったのに対し、今年度は日本の産業構造全体に関連する内容となっていました。会話文や資料自体は過年度の適性検査問題と比較しても特に複雑といえる内容ではないため、読み取りの難易度は高くなりません。しっかりと対策をして臨むことで高得点を目指せる問題でした。
[大問3]は、前年度に引き続き小問題は2問。各小問に2つの設問があり実質4問の出題です。実験結果を読み取りふさわしい記号を選ぶ問題が1題、実験結果を読み取った分析結果を記述する問題が3題という内訳でした。実験を読み解くうえで必要な数値については会話文中に与えられていたので、計算はあまり必要ありませんでした。実験結果を正しく読み解き、記述の答案を作成するのに時間がかかったものと思われます。