Camp+では、各中学・高校・大学の過去問について、傾向と分析を詳細に解説しています。都立中・都立高を中心に最新の過去問を大問ごとに分類し、傾向が一目で分かります。
文章1:小島渉『カブトムシの謎をとく』(一部改変)による
文章2:恩田陸『spring』による
〈出題形式〉
二つの文章に対して、読解問題が2問、作文問題1問という形式は昨年度と同様でしたが、文章については令和2年度(2020年度)ぶりに小説文が採用されました。昨年度の読解問題の一つは、特定の動作による効能を文章1、文章2それぞれから読み取るというもの、もう一つは文章2傍線部の表現についての問いを、文章1から適切な答えを抜き出すというもの(いわゆる横断型)でした。すなわち、問題の作りの上で、文章1と文章2のつながりが強かったと言えます。一方、今年度は解答欄に合うように答えを書くものと抜き出しをするという形式は同じでしたが、二つの文章内容について話し合う会話文が記載されており、それが2問に大きく関わってくるものになっていました。これまでもこのような会話文が組み込まれることはありましたが、作文ではなく読解の方に関わってくるのは初めての形式でした。この会話文の中で、文章1と文章2の共通点が示されるものの、問題1、問題2はあくまでそれぞれの文章の読解が求められるものとなっており、異なる二つの文章を重ねて読む、という都立中の適性検査1の独自性は薄まりました。作文問題については、字数は400以上440字以内で、段落ごとに書く内容についての指定はなく、問いに書かれた条件をもとに書いていくという、例年通りの形式でした。
ただし条件の中で、文章と「会話」の内容をふまえるという指示があり、読解・作文ともに文章と会話の理解が重要なものであったと言えます。テーマは自分にとっての「謎」を解決するために、どのような取り組みをするのかというものになっており、決して書きにくいものではありませんでした。
(問題1)会話文にあてはまる適切な語句を文章から抜き出し記述する問題
会話文に出てくる人物の、文章1の内容に関する発言にある空欄を補う問題でした。会話文に空欄が設けられる問題は初めて出題される形式でした。空欄は「ア」と「イ」の2か所あり、文章内から探す言葉の方向性を確認するために、会話文の内容を読み取る必要があります。会話文でかおるさんは、二つの文章の人物は両者とも、自分にとっての「謎」を解こうとしているということを述べています。そしてあおいさんは、この考えに同意したうえで、「柴田さんは、毎日継続し「ア」にカブトムシの様子を「イ」することで、謎をとこうとしている・・・」と述べています。よって、文章1の柴田さんの謎をとこうとする行動について書かれている部分を探していきます。会話文中という特殊性はあるものの、空欄自体は文章1の内容についてまとめた一文の中にあるため、一般的な国語の穴埋め問題と変わりありません。空欄の前後の表現から容易に答えを見つけることができるものでした。落ち着いて確実に得点しておきたい問題であったと言えます。
(問題2)空欄にあてはまる語句を文章内の表現をもとに考え記述する問題
会話文内の人物が文章2の登場人物の気持ちについて述べており、その気持ちがどのようなものなのか、空欄に適切な言葉を補充しながら説明する問題でした。特徴のある問題指示として、「文章2の中の一続きの表現をもとにして」というものがありました。「一続きの表現」なので、いくつかの文に解答の候補がまたがって述べられていると考えることができます。この表現を見つける手がかりとして、やはり会話文の分析が必要になります。文章2の登場人物の、どういう状況で何をしているときの気持ちを探せばよいのかということを確認することで、「一続きの表現」を見つけることは決して難しいものではありませんでした。しかし該当する表現部分はある程度の長さがあり、解答の候補になる言葉が複数考えられ、それを解答欄に合うように適切な字数で答えなくてはなりません。そういう意味では、差がつく問題であったと言えます。
(問題3)作文問題(400以上440字以内)
自分にとっての「謎」とは何か、またそれを解決するために、どのように取り組んでいる、あるいは取り組んでいこうと考えているか、440字以内で書く問題でした。過去の問題では文章1と2をふまえるという指示がほとんどでしたが、今回は二つの文章だけでなく会話文の内容もふまえる必要がありました。複数の文章から共通して述べている要素を考えて解いていくという練習をenaの日曜特訓や過去問演習などで積んでいた受検生は、このような指示に対しても落ち着いて対応ができたでしょう。文章1と2の登場人物の行動、会話文の内容をふまえると「自分が解き明かしたいと思うことを解決する行動として、継続して何回も繰り返し取り組む」という要素が読み取れます。以上の内容と条件をふまえて今回の作文構成を考えると、自分にとって解き明かしたい「謎」を一つ明らかにし、いま取り組んでいる、あるいは取り組もうとしている行動を、「継続」「繰り返す」という要素を含めて書いていくというものになります。テーマについても、enaの受検生は何度も練習をしてきた内容であり、昨年度の問題よりも書きやすくなっていたと言えます。
1⃣立体図形をテーマとした問題
〔問題1〕は、立体図形の展開図の面積を求める問題でした。〔問題2〕は、途中まで組み立ててある立体に2種類のブロックを使うことで、立方体を作る問題でした。例年との大きな違いは、大問を通して記述が無かったことです。代わりに、小数の計算や投影図の考え方などの算数の基礎的な力を必要とする出題となっており、計算力、空問把握能力が問われる問題でした。難度は昨年度と同等か、やや易化した形となりました。
〔問題1〕展開図から面積を求める問題
提示されている展開図と2人の会話から、展開図の面積を求める式と答えを出す問題でした。解くためのヒントは少ないものの、展開図から組み立てたときにどの辺とどの辺が重なるのか、円周率である3.14 を使った小数を含めた四則演算が正確にできるかがポイントです。面積を求めるための式と答えを出すといったシンプルな問題ではありますが、算数の基礎となる正確な計算力が必要となるため、日頃から小数のかけ算やわり算の演習を積むことで、早く正確に計算ができる力を養っておくとよいでしょう。
〔問題2〕立体を組み合わせることで立方体を作る問題
途中まで組み上げられている立体に、2種類のブロックをいくつか組み立てることで立方体を作る問題でした。一見、途中まで組み上げられている立体が複雑に見えますが、2種類のブロックのうち1種類しか合わない場所があるため、そのことに気づけたかどうかが正否の分かれ目となりました。図てから見た右の1列、正面の手前1列については1種類のブロックのみ組み合わせることができ、残りの8ヶ所を2種類のブロックで作る必要がありました。空いている形が複雑なところから埋めていくパズルに近い問題で、ブロックを埋めた後の形が正確にイメージできる、もしくは図にかくことができれば、解きやすい問題でした。
2⃣製品のリユースやリサイクルについて考える問題(共同作成)
令和3年度から引き続き小問2問の構成ですが、〔問題1]は、(1)と(2)に分かれており、(1)では割合の計算が出題されました。
共同作成問題の適性検査日大問2で割合の計算が出題されたのは、平成30年度以来です。大問全体の話題はリュースやリサイクルといった循環型社会に関するもので、受検生にとっては見慣れたテーマでしょう。また、会話文や資料は標準的で取り組みやすい内容であったため、2問とも正解するべき問といえます。解答に必要な要素を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現することが大切でした。
〔問題1〕割合を計算し、資料を比較して分析する問題
(1)は、図2または図3から選択した資料における循環利用率を計算したうえで、その結果が衣服の循環利用率と比較してどちらが高いかを答える問題でした。計算自体はどちらを選択しても3桁÷3桁と平易な割合の計算なので、確実に正解したい1問と言えます。ただし、ここでの選択は(2)にも関わるため、ただここを速く確実に解くだけでなく、そちらも見据えての選択をしておきたい1問でした。
(2)は、製品ごとの循環利用における特徴を比較し、共通点と異なる点を説明する問題でした。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、5年連続の出題となりました。問題の条件から、「ペットボトルと~の循環利用の共通点は~であり、異なる点は~である。」といった解答の枠を作り、必要な情報を読み取って完成させると解きやすいでしょう。共通点はペットボトル(図2)を選んでも、紙(図3)を選んでも自明ですが、異なる点は紙の方が答えやすかったため、(1)を解く時点で、こちらまで目を配っておく視野の広さがある受検生は、多少なりここで時問を節約できたでしょう。
〔問題2〕複数の資料を組み合わせて説明する問題
衣服の循環利用率を高める取り組みによって、消費者の意識や行動がどのように変化して循環利用率が高まるのかを説明する問題でした。[問題1](2)と同様に、解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は6年連統の出題となりました。この問題を正解する一番のポイントは、花子さんの「循環利用率を高める意識や行動もあれば、そうでないものもあります。」というセリフです。この観点で図4、図5、図6を見ると、無計画な服の購入、まだ着られる衣服を可燃ごみとして捨ててしまう、などが「そうでない」意識や行動であることが分かります。そして、その上でカードを見ると、そういった問題点を改善し、図4、図5、図6の「循環利用率を高める意識や行動」に当たるものへ導いていることが分かります。例年通りの都立中適性検査文系の、セオリー通りの解法が身についているか否かで正否が分かれる一問でした。
3⃣シャボン玉の性質について考える問題
近年の傾向通りの問題でしたが、例年よりも会話文が少なくなり、実験の手順の説明が詳細化されました。問題文中の表現も含めると、これまでであれば実験結果の着眼点を示唆するだけであったものが、それに加えて検証の仕方まで示唆されるものとなっており、大幅に解きやすくなったと言えます。しかし、思い込みなしに丁寧に問題文を読み取らないと、読み取り方が問違いやすい箇所があり、落ち着いて処理できたかどうかが重要でした。共同作成の適性検査山は、算数系の大問1の方が難度の高い年度と、理科系の大問3の方が難度の高い年度があります。今年度は解答の記述量の面で、大問3の方が難度が高かったと言えるでしょう。適性検査全体の難度が例年よりも易化したことと合わせて考えると、学校によっては合否の決め手となる大問と言えます。なお、シャボン玉とその体積、割れ方などを題材とした問題は後期日曜特訓第14回の適性検査I大問3と同一でした。このため、enaの後期日曜特訓を受講している多くの受検生は、大変取り組みやすい問題だったと言えます。
〔問題1〕シャボン玉の割れやすさに関する問題
シャボン玉は砂糖水から作ると割れにくい、ということについて、望ましい濃度を探る実験についての問題でした。食器用洗前、濃度、などのキーワードは、令和4年度の問題を考様させます。あくまで題材の近さであり、問われているものは異なりますが、問われているものを正しく読み取ると、実は令和6年度の(問題1)ととても似ています。条件を1つ変化させた実験2つの結果をふまえて答えを出す、結果をただまとめるだけでなく、その内容を換言する一手問がある、という特徴が踏題されています。そのため、近年の過去開をしっかり解きこんでいった受検生にとっては解きやすい一問でしたが、完全に正解した受検生はそこまで多くないと思われます。鍵となるのは前述の「換言」で、問われているのはシャボン玉の「体様」の比較ですが、資料には体積ではなく、空気入れを押した回数がまとめられています。「回数が多い→シャボン玉に入れられた空気が多い→体積が大きい」という置き換えを正しく説明しきれているかどうかが記述のポイントになります。こういった問題で点数を取り切れるように、過去問の演習をする際には、ただその問題を例題として扱うのではなく、肝となる部分はどこか、を意識して行うとよいでしょう。
〔問題2〕シャボン玉の時問経過による割れ方に関する問題
時問経過により、シャボン玉のまくをつくる液が徐々に下部にたまっていき、薄くなった上部から割れていくことについての実験結果の考察を答える問題です。実験の手順と結果は大変分かりやすく示されており、結果に対しての考察の検証をする実験まで行っていますから、現象についての理解は平易でした。そのため、この問題における得点の差は、問題文の条件通りに解答を作ることができているかどうかによるものが大きいでしょう。適性検査の問題文としての正しい読み取り方をすると、解答には4つの要素を入れなければなりません。それを正しい言語表現でまとめられたかどうかが重要でした。特に、前述の日曜特訓の問題で、現象(時問経過により、シャボン玉の液が下へいくことで、上部がうすくなり割れる)について問うほぼ同一のものを経験していますから、enaで日曜特訓を受講している受検生には特に解きやすい一問であったと言えます。
〈出題形式〉
大泉中の独自作成問題で、大問2題小問6問構成でした。昨年度同様に、大問1が理科分野、大問2が算数分野からの出題ですが、理科と算数の内容に明確な差は見られませんでした。
1⃣砂時計の砂が落ちる時間に関する問題
物理分野からの出題でした。理科分野ではあるが、計算問題を主体とした構成になっている点は例年通りの傾向といえます。
〔問題1〕砂がすべて落ちきるまでにかかる時間を比較して答える問題
ろうと(大)とろうと(小)に入る砂の体積と密度から砂の重さを求め、グラフから比例の関係を読み取り、砂がすべて落ち切るまでにかかる時間を求める問題でした。単位量あたりの大きさを用いる点や、比例計算を行う点は大泉中の典型パターンとなりますので必答問題と言えます。
〔問題2〕プラスチック球が落ちてこない理由を記述する問題
ろうとに入れたプラスチック球が出口のところで詰まっている様子を写した写真を見て、プラスチック球が崩れない原因を、プラスチック球の並び方に注目して説明する問題でした。定番の15字程度の短い記述でしたが、アーチ状に並んだプラスチック球の並び方を言葉で説明するのに苦労した受検生が多く見られました。如何に端的かつ的確に写真の状況を説明できたかが重要だったと言えます。
〔問題3〕11分間と7分間の砂時計で45分の計り方を考える問題
(1)は、1分間から44分間のうち11分間と7分間の砂時計を用いて図ることができるものが何通りあるかを決める問題でした。一つ一つ丁寧に選べる必要があり、時間を要する問題でした。(2)は、
2つの砂時計を組み合わせて45分間の計り方を考える問題でした。試行錯誤して手を動かす必要があり、難度の高い問題でした。(1)、(2)ともに時間を要するため、空欄のままの問題へ進んだ受検生も見られました。
2⃣インターネットの電波のつながりやすさについて考える問題
〔問題1〕2種類の電波の特ちょうから適切な方を選ぶ問題
AとBの2種類の電波から適切なものを選び、理由を述べる問題でした。資料にある特徴をつかめれば平易な必答問題だったと言えます。
〔問題2〕表から変化の関係を読み取り、電波の強さを計算で求める問題
電波を出している装置からの距離と、波の強さの関係を示した表をもとに、特定の距離における電波の強さを計算で決める問題でした。「装置からのきょりが2倍、3倍と変化すると」という表現から比例か反比例の関係が予想されますが、実際にはどちらでもなく 13ずつ小さくなるという規則に基づいて計算する必要がありました。計算式を答えるという大泉中の定番の問題ですので、enaの日曜特訓や過去問演習などで関係式をつくる練習を積んでいた受検生にとっては取り組みやすい問題でした。
〔問題3〕拡大図・縮図の関係を利用する問題
家から 10km離れたところに電波塔があり、その問に新しいマンションが建つ際、家から電波塔の高さ 550mの地点を直接見ることができるのは、マンションの高さが何m未満の場合かを求める問題でした。木の陰の長さから、木の高さや遠く離れた富士山の高さを決めるといった類題が多数あり、多くの受検生にとっては扱った経験がある平面図形の定番の問題であり、確実に正答しておきたい問題でした。
最後の問題は、時間配分を調整し、必ず取り組むべき問題だったとも言えます。
文章1:東直子「生きていくための呪文」による
文章2:藤田 真一『俳句のきた道 芭蕉・蕪村・一茶』
〈出題形式〉
4000字程度の文章が1題の形式で、読解問題2間、作文問題1間の例年と変わらないスタイルですが、前年度に比べて文章量は2倍近く増えました。また、ここ2年姿を消していた作文の条件指定が再登場しました。読解問題の字数は合計最大105字、作文の最大字数が460字となり、昨年よりは書く分量がやや減少した形です。テーマは「インターネット上で個人の好みに合った情報が自動的に選択される仕組み」についての説明と生命の子見不可能な存在であることを対比させて「人間は予見不可能な創造的 進化を遂げる」ものであることを述べています。SNSなどで同じ動画を見ても、それぞれの感じ方は個性によって異なるという筆者の考え方がとらえることができれば難しい内容ではありません。
(問題1)問われている内容に一致する具体例をそれぞれの文章から探し記述する問題
短歌・俳句をくり返し唱えたり、思い浮かべたりすることに、どのような効果があるのかを答える問題です。空欄を補充する形で答えるので「という効果」につながるような言葉を使っていきます。前年度・前々年度でも今回の問題のように字数が指定されていないものが出ています。また今回は、「文章1・文章2で挙げられている例を一つずつ探し、解答らんに合うように答えなさい」という指示があります。ポイントは各文章からそれぞれ一つずつ 例を探すということです。例ですので、抽象化されたものではなく具体例に注目します。そして「探す」ということなので、字数の指定などはないものの、ほとんど抜き出す形式に近いと言えます。まずは文章1・文章2のそれぞれから「短歌や俳句をくり返し唱えたり、思い浮かべたりする」という動作に該当する例を探していき、その動作によってもたらされる効果・影響が書かれている部分を、「という効果」につながる形に直して、書いていきます。抽象・具体を区別する必要があり、普段の演習時から、これらをしっかり区別して読解をおこなっているかどうかが、解く上でのポイントになっていました。
(問題2)文章2の傍線部に関連する二文を、文章1から抜き出し記述する問題
文章2の傍線部について問われ、文章1から連続する二文を探して、最初と最後の4文字を答える問題です。これまでの共同作成問題で何度も出されてきた文章横断型の問題ではありますが、今までは傍線部がある文章から大まかな情報を整地して、もう一方の文章から探す答えの方向性を絞るという作業が求められました。しかし今回は、文章2から得られる傍線部に関する情報はほとんどなく、「文章1の筆者は、短歌を読んで どのような情景を想像しているでしょうか」という問いから考えていけばよい問題でした。文章1から短歌を読み、その内容から何を想像しているかということに注意して読んでいきます。冒頭の岡本かの子・与謝野晶子の短歌の後に、「桜の咲くころ~と浮かぶ。」という部分がありますが、連続する二文を情景として抜き出すことを考えると、その後の文が答えとして考えることは難しいです。次に大西民子の短歌の後にも、想像している情景として読み取れる部分があり、この「青い空」に関する記述を抜き出す必要がありました。文章2を踏まえるという過程があまり求められず、文章1から情報を探す際にも、ややわかりにくいものになっているので、この問題に時間をかけてしまうことがないように気を付けなければいけない問題でした。
(問題3)二つの文章のいずれかの考えに触れ、自分の考えを書く問題
これからの学校生活で仲間と過ごしていくうえで、言葉をどのように使っていきたいかの考えを述べる問題です。また文章1・文章2の筆者の、短歌・俳句に対する考え方のいずれかにふれることが条件になっています。したがって、まずは短歌・俳句に対する考えを読み取ったうえで、自分にとって書きやすいほうを選択する必要があります。文章1は短歌や俳句を何度も唱えることで、自分の気持ちを前向きに変えることができるという内容であり、文章2は表面的な言葉だけを見るのではなく、日々生活を送っている人々の気持ちを想像して勉強していくうちに、すばらしい俳句が生まれるという内容です。言葉によって気持ちを前向きにできるという内容の文章1の方が、学校生活で仲間と関わるうえで使っていく言葉に関する考えは書きやすいと思われます。選んだ文章の内容にふれつつ、その内容に寄せた自分の考えとその根拠などを、学校生活で想定される例とともに書いていけばよいでしょう。近年の作文問題の字数は、400字以上440字以内の傾向が続いており、各段落に各内容についても詳細なものは指定されていません。つまり指定字数の中で、ある程度自分で構成を考えた上で書いていく近田が求められているのだと考えられます。また今後の学校生活を意識する内容も続いているので、中学校生活での例を挙げられるように、対策をしていく必要があるでしょう。
1⃣ デジタル数字を題材にした問題(共同作成問題)
1⃣は前年同様小問2題のシンプルな構成でした。どちらの問題もデジタル数字を題材としたパズル要素の強いものとなっています。条件に合わせて考える力が必要でした。全体的にここ数年の中では取り組みやすい難易度となっています。
〔問題1〕条件に合う作業の分担方法を考える問題
マグネットシートから棒状のマグネットを切り取り必要な個数をつくる問題です。花子さんと太郎さんで「かく」作業と「切る」作業を分担して行い、45分未満ですべての作業を終わらせます。作業する人によってかかる時間が違うので、どう組み合わせるべきなのか当たりをつけて解き進める必要があります。太郎さんはマグネットシート1枚当たり「かく」作業に10分、「切る」作業に5分かかり、花子さんは「かく」作業も「切る」作業もマグネットシート1枚当たり7分かかります。問題文の条件より、最初の作業は同時に始めないといけないため、最初の作業は二人とも「かく」作業になります。その後は、「かく」作業が太郎さんより速い花子さんはずっと「かく」作業を、「切る」作業が速い太郎さんはずっと「切る」作業を、という風に分担すれば45分未満で作業を終えることができます。ルールをきちんと把握していれば、記述する内容も単純なので、比較的得点しやすい問題でした。
〔問題2〕最短時間で操作を完了させる方法を考える問題
ルールに従って、指定された3けたのデジタル数字を最短時間で作る方法を考える問題です。「マグネットをつける操作(2秒)」「マグネットを取る操作(2秒)」「数字の書かれたポードを180度回す換作(3秒)」「2枚のボードを入れかえる操作(3秒)」を組み合わせて考えます。本間では456から987にする場合が問われています。回転と入れかえはそれぞれる秒かかってしまうものの、入れかえを行わずに456を987にすることを考えると、どうしても時間がかかってしまいます。したがって、できるだけ効率の良い手順で入れかえを行う必要があります。会議文で6を回転させると9になることが説明されているので、6を回転させて9にしてから4と入れかえ、4を7にすることを考えます。真ん中の5はマグネットを2本加えれば8にできます。しかしこれが「最短」の方法であることを確かめようと思うと時間がかかりますので、確実に得点するという観点で言うとやや離しい問題だったように思われます。
2⃣ 公共交通機関の利用について考える問題
令和3年度から引き続き小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。大問全体の話題は、令和3年度から令和5年度までは3年連続で日本の産業を題材にした内容だったのに対し、今年度は令和2年度と同様に公共交通機関を題材にした内容となっていました。会話文や資料は過年度の適性検査問題と比較しても標準的な内容であり、設問も解答の見当をつけやすいため平易な問題といえます。解答の根拠になる部分を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現する力をみられる問題でした。
〔問題1〕グラフが示す数値の根拠を考察する問題
公共交通機関の利用客が航空機または鉄道に偏っている理由を、表1の所要時間と料金の観点から考察する問題です。解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は、5年連続の出題となりました。図1より、AからBへの移動には航空機と鉄道がほぼ同じ割合で利用されているのに対し、AからCへの移動には航空機の利用合が非常に高く、AからDへの移動には鉄道の利用制合が非常に高いことが読み取れます。また、表1には、航空機と鉄道それぞれを利用して移動した場合の所要時間と料金が移動経路ごとに示されています。これらを関速させて考えると、人びとが公共交通機関を利用するときは、公共交通機関ごとの所要時間および料金の差をふまえて選択していると予想できます。なお、AからCとAからDはどちらを選択しても正解です。ただし、問題の条件より、いずれの場合もAからBの公共交通機関の利用割合と比べながら解答する必要があることに注意してください。問われていることもふまえて考えると、解答の若き方は「AからBの公共交通機関の利用合は~になっているのに対して、AからC(またはAからD)の公共交通機関の利用合は~になっている。その理由は、~からと考えられる。」といった表現が考えられるでしょう。
〔問題2〕複数の資料を組み合わせて説明する問題
「ふれあいタクシー」を導入することになった理由と、その効果について考えられることを、複数の資料と会話文から読み取って説明する問題です。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、4年連続の出題となりました。ただし、今年度は理由と効果を書く解答欄が分かれている形式の解答用紙だったため、受検生は例年と比較すると問いに正対して解答しやすかったものと思われます。会話文から、E町では路線バスの運行本数が減少しているなかで「ふれあいタクシー」を導入したことがわかります。また、利用者の90%近くが「ふれあいタクシー」に満足していることがわかります。これらの情報をもとにして、問題で指定された4種類の資料から読み取れる内容を、過不足なく組み込みながら説明するようにしましょう。今回は、表2、図2、表3が、それぞれの項目の推移を示す資料となっています。推移を読み取るときは、数値の大まかな変化の過程を読み取ることがポイントです。
3⃣ 摩擦に関する実験を題材とした問題
3⃣は、ここ3年は、小問2つにそれぞれ枝問が2つあり合計4問、という構成でした。しかし今年度は枝問が1つずつになり、合計2問構成となりました。実験の内容自体も比較的素直で読み取りやすいため、ここ数年では最も取り組みやすい難易度だったと言えます。題材としては、旅に関して調べる実験を行い、その結果を分析する問題でした。計算を必要とする問題はなくなり、読解力・考察力・記述力が試される構成となりました。どちらの問題も、内容理解はそれほど難しくないため、平均点は高くなると考えられます。しかし、満点解答を出すうえでは、問題で問われている内容を過不足なく盛り込んで解答する、答案作成力が必要な問題でした。
〔問題1〕素材の表面の状態の違いによる摩擦の大きさの違いを考える問題
ペットボトルのキャップにつけられたみぞの摩擦による効果を、モデル化して調べた実験についての問題です。実験の結果から、表面にみぞをつけることで、手でキャップを回すときにすべりにくくなると考えられる理由を説明する問題でした。ペットボトルのキャップを回すときのように、みぞの方向と力の方向が垂直なときには、動き出すのに必要なおもりの個数が多いことが、実験結果からわかります。 これが、ペットボトルのキャップを回すことを考えると、すべりにくいということに相当します。また、問題では「手でつかむ力が大きいときでも小さいときでも」とありますので、載せる金属の重さが 750g の場合と 1000gの場合の両方について記逃する必要があったと考えられます。このように、「手でつかむ力」を「のせる金属の重さ」に、「表面のみぞの方向が回す方向に対して垂直であるペットボトルのキャップ」を「糸に対して垂直にみぞをつけたプラスチックの板」に、「すべりにくさ」を「おもりの個数」に、それぞれモデル化した実験が行われていることを理解する必要がありました。
〔問題2〕斜面をすべり下りる物体の速さの違いを考える問題
会話文から、斜面をすべり下りる物体の速さについて、「物体が斜面に接する面積」、「物体の重さ」、「斜面に接する物体の素材」の3つの観点が挙げられ、これらの条件によってすべり下りる速さがどう変わるかを調べる実験についての問題です。6通りの条件で斜面をすべり下りるのにかかる時間を調べた実験の一部が隠されており、その中から結果が同じであると予想できる組み合わせを選び、そう考えた理由を説明する問題でした。この設問に対しての実験は2つ行われていますが、両方を通して、複数の条件によって変わる実験結果を考察する必要があります。そのため、対照実験の考えを用いた実験結果の読み取りと客作成が必要な問題でした。「実験2では同じでなかった条件のうち実験3では同じにした条件」については、そのことを意識して実験手順を読み取れば、「物体の重さ」であること自体は分かりやすいです。あとは、明らかになっている結果のうち、「斜面に接する物体の素材」が同じ場合には、すべり下りる時間も同じになっていることが分かれば、結果が同じになる組み合わせを選ぶことは、比較的やりやすかったと言えます。答案作成においても、「実験2では同じでなかった条件のうち実験3では同じにした条件は何であるかを示して」という指示を意識することが重要でした。
大泉中の独自作成問題で、大問3題小問6問構成です。前年度同様に、〔大問1〕は理科分野、〔大問2〕は算数分野からの出題でした。
1⃣プロペラモーターと光電池を使った様々な実験をテーマとした問題
物理分野からの出題でした。理科分野ではあるが、計算問題を主体とした構成になっている点は例年通りの傾向といえます。
〔問題1〕 単位時間あたりのプロペラの回転数を考える問題
ハイスピードカメラの1秒間あたりに撮影できるコマ数と、その間にプロペラが回転した角度を示した数を基に単位時間当たりのプロペラの回転数を計算する問題でした。なるべく計算が容易になるものを選び、短時間で処理したい問題です。
〔問題2〕光電池の光の当たり方とプロペラの回転の関係について考える問題
光電池の一部を紙で覆って太陽光を渡った時に、プロペラが回転するかしないかを考える問題でした。実験2からどのような紙を置き方をしたときにプロペラが回転するかが予測でき、実験3でその裏付けができる形となっています。
〔問題3〕電流の大きさとプロペラの風で浮く紙の枚数の関係を問う問題
表とグラフから規則を読み取り、規則に従って計算する問題です。規則が明確に読み取れるようになっていて、四捨五入に関する但し書きもあることからきちんと計算で求める必要があったと言えます。
2⃣トイレットペーパーを題材に立体的な考え方を問う問題
図形をテーマにした問題でした。トイレットペーパーという身近なものを題材にしながらも、立体的な感覚が備わっているかをみる問題となっています。単純ではあるが計算の工夫をしっかり行わないとミスにつながる恐れがあります。
〔問題1〕トイレットペーパーの厚さから残りの巻き数を求める問題
トイレットペーパーの外側の直径と内側の直径の差から残りの厚さを求める際に、2で割ることを忘れないようにすることが重要です。
〔問題2〕トイレットペーパーの体積から残りの長さを求める問題
トイレットペーパーを広げた状態を、非常に薄い直方体とみなして計算する問題です。数字が大きくなることや3.14を用いることで計算ミスが発生しやすくなっているので計算の工夫が必要です。
〔問題3〕表面積が最小となるような詰め方を考える問題
36個のトイレットペーパーを段ボールに詰めるときの、表面積が最も小さくなる詰め方を考える問題です。体積が同じであれば平面で囲まれた図形の中で立方体が最も表面積が小さくなることがわかっていれば、すぐに正解にたどり着ける問題でした。いくつかの形を試していくうちに細長い形では表面積が大きくなってしまうことに気づくことができれば正解にたどり着くことができますが、制限時間などを考えても難度の高い問題でした。
例年と同様、読解問題が2問、作文問題が1問出題されました。読解問題では2019年度以降続いて出題されていた文章横断型の問題(傍線が引いてある文章とは異なる文章から回答を書いたり探したりする問題)は出題されませんでした。
作文問題は前年度と同様、各段落に書くべき内容は指定されず、自分で適切に段落分けをする問題でした。
〔問題1〕は傍線部分の理由を本文中から抜き出す問題です。傍線部周辺の情報を丁寧に読み取ることが求められましたが、〔問題2〕は、「行間を読む」ことについて、本を読むことにおいては何をどうすることか、「真実」「事実」という語を用いて説明する問題です。一見簡単そうに見えますが、端的にまとまっている一文があるわけではなく、複数箇所の情報をまとめる必要があるため、点数の分かれる問題でした。
〔問題3〕は、二つの文章から読み取った「共通していると思う考え方」をまとめ、それをはっきり示したうえで、これからの学校生活でどのように学んでいくつもりか、関連させて作文を書くことが求められています。これまでの年度の問題と比べて、二つの文章ともに推象度が高いこと、双方の文章ともに筆者の主張が一文でまとめられる類の文章ではないこと、共通点が明示されていないこと、などの理由から、二文の「共通していると思う考え方」をまとめる作業は難しかったはずです。日ごろから、文章全体の大量を読み取る力を養うことが肝要です。
大問3題小間6構成です。前年度同様に、〔大問1〕は質数分野、〔大問2〕は社会分野、〔大問3〕は理科分野からの出題でした。
1⃣プロペラモーターと光電池を使った様々な実験をテーマとした問題
単位時間あたりのプロペラの回転数を考える問題 ハイスピードカメラの1秒間あたりに撮影できるコマ数と、その間にプロペラが回転した角度を示した数を基に単位時間当たりのプロペラの回転数を計算する問題でした。なるべく計算が容易になるものを選び、短時間で処理したい問題です。 〔問題2〕光電池の光の当たり方とプロペラの回転の関係について考える問題 光電池の一部を紙で覆って太陽光を渡った時に、プロペラが回転するかしないかを考える問題でした。実験2からどのような紙を置き方をしたときにプロペラが回転するかが予測でき、実験3でその裏
大問3題小間6構成です。前年度同様に、〔大問1〕は算数分野、〔大問2〕は社会分野、〔大問3〕は理科分野からの出題でした。
〔大問1〕は、プログラム通りに動くロボットの移動経路を考える問題や、複数のスイッチを押したときに起こる変化を考える問題など、条件に合わせて考える力が必要な問題でした。適性検査の理系としては頻出の内容です。非常に難易度が高かった前年度に比べると落ち着いたものの、依然として文章量・作業量ともに多く、45分の中で解き切るには十分な準備が必要でした。
〔大問2〕は、前年度、前々年度と同様に小問2題の構成で、計質問題は出題されませんでした。大問全体の話題も引き続き日本の産業について考える内容でしたが、前々年度と前年度は第1次産業を中心とした内容だったのに対し、今年度は日本の産業構造全体に関連する内容となっていました。会話文や資料自体は過年度の適性検査問題と比較しても特に複雑といえる内容ではないため、読み取りの難易度は高くなりません。しっかりと対策をして臨むことで高得点を目指せる話題でした。
〔大問3〕は、前年度に引き続き小問題は2問。各小問に2つの設問があり実質4問の出題です。実験結果を読み取りふさわしい記号を選ぶ問題が1題、実験結果を読み取った分析結果を記述する問題が3題という内訳でした。実験を読み解くうえで必要な数値については会話文中に与えられていたので、計算はあまり必要ありませんでした。実験結果を正しく説み解き、記述の答案を作成するのに時間がかかったものと思われます。