中学・高校・大学
過去問分析

Camp+では、各中学・高校・大学の過去問について、傾向と分析を詳細に解説しています。都立中・都立高を中心に最新の過去問を大問ごとに分類し、傾向が一目で分かります。

東京都立武蔵高校附属中等教育学校 2025年度NEW!

〔適性検査Ⅰ〕共同作成問題

文章1:小島渉『カブトムシの謎をとく』(一部改変)による
文章2:恩田陸『spring』による
〈出題形式〉
二つの文章に対して、読解問題が2問、作文問題1問という形式は昨年度と同様でしたが、文章については令和2年度(2020年度)ぶりに小説文が採用されました。昨年度の読解問題の一つは、特定の動作による効能を文章1、文章2それぞれから読み取るというもの、もう一つは文章2傍線部の表現についての問いを、文章1から適切な答えを抜き出すというもの(いわゆる横断型)でした。すなわち、問題の作りの上で、文章1と文章2のつながりが強かったと言えます。一方、今年度は解答欄に合うように答えを書くものと抜き出しをするという形式は同じでしたが、二つの文章内容について話し合う会話文が記載されており、それが2問に大きく関わってくるものになっていました。これまでもこのような会話文が組み込まれることはありましたが、作文ではなく読解の方に関わってくるのは初めての形式でした。この会話文の中で、文章1と文章2の共通点が示されるものの、問題1、問題2はあくまでそれぞれの文章の読解が求められるものとなっており、異なる二つの文章を重ねて読む、という都立中の適性検査1の独自性は薄まりました。作文問題については、字数は400以上440字以内で、段落ごとに書く内容についての指定はなく、問いに書かれた条件をもとに書いていくという、例年通りの形式でした。 ただし条件の中で、文章と「会話」の内容をふまえるという指示があり、読解・作文ともに文章と会話の理解が重要なものであったと言えます。テーマは自分にとっての「謎」を解決するために、どのような取り組みをするのかというものになっており、決して書きにくいものではありませんでした。

(問題1)会話文にあてはまる適切な語句を文章から抜き出し記述する問題
 会話文に出てくる人物の、文章1の内容に関する発言にある空欄を補う問題でした。会話文に空欄が設けられる問題は初めて出題される形式でした。空欄は「ア」と「イ」の2か所あり、文章内から探す言葉の方向性を確認するために、会話文の内容を読み取る必要があります。会話文でかおるさんは、二つの文章の人物は両者とも、自分にとっての「謎」を解こうとしているということを述べています。そしてあおいさんは、この考えに同意したうえで、「柴田さんは、毎日継続し「ア」にカブトムシの様子を「イ」することで、謎をとこうとしている・・・」と述べています。よって、文章1の柴田さんの謎をとこうとする行動について書かれている部分を探していきます。会話文中という特殊性はあるものの、空欄自体は文章1の内容についてまとめた一文の中にあるため、一般的な国語の穴埋め問題と変わりありません。空欄の前後の表現から容易に答えを見つけることができるものでした。落ち着いて確実に得点しておきたい問題であったと言えます。

(問題2)空欄にあてはまる語句を文章内の表現をもとに考え記述する問題
 会話文内の人物が文章2の登場人物の気持ちについて述べており、その気持ちがどのようなものなのか、空欄に適切な言葉を補充しながら説明する問題でした。特徴のある問題指示として、「文章2の中の一続きの表現をもとにして」というものがありました。「一続きの表現」なので、いくつかの文に解答の候補がまたがって述べられていると考えることができます。この表現を見つける手がかりとして、やはり会話文の分析が必要になります。文章2の登場人物の、どういう状況で何をしているときの気持ちを探せばよいのかということを確認することで、「一続きの表現」を見つけることは決して難しいものではありませんでした。しかし該当する表現部分はある程度の長さがあり、解答の候補になる言葉が複数考えられ、それを解答欄に合うように適切な字数で答えなくてはなりません。そういう意味では、差がつく問題であったと言えます。

(問題3)作文問題(400以上440字以内)
 自分にとっての「謎」とは何か、またそれを解決するために、どのように取り組んでいる、あるいは取り組んでいこうと考えているか、440字以内で書く問題でした。過去の問題では文章1と2をふまえるという指示がほとんどでしたが、今回は二つの文章だけでなく会話文の内容もふまえる必要がありました。複数の文章から共通して述べている要素を考えて解いていくという練習をenaの日曜特訓や過去問演習などで積んでいた受検生は、このような指示に対しても落ち着いて対応ができたでしょう。文章1と2の登場人物の行動、会話文の内容をふまえると「自分が解き明かしたいと思うことを解決する行動として、継続して何回も繰り返し取り組む」という要素が読み取れます。以上の内容と条件をふまえて今回の作文構成を考えると、自分にとって解き明かしたい「謎」を一つ明らかにし、いま取り組んでいる、あるいは取り組もうとしている行動を、「継続」「繰り返す」という要素を含めて書いていくというものになります。テーマについても、enaの受検生は何度も練習をしてきた内容であり、昨年度の問題よりも書きやすくなっていたと言えます。



〔適性検査Ⅱ〕共同作成問題

1⃣ 立体図形をテーマとした問題
 〔問題1〕は、立体図形の展開図の面積を求める問題でした。〔問題2〕は、途中まで組み立ててある立体に2種類のブロックを使うことで、立方体を作る問題でした。例年との大きな違いは、大問を通して記述が無かったことです。代わりに、小数の計算や投影図の考え方などの算数の基礎的な力を必要とする出題となっており、計算力、空問把握能力が問われる問題でした。難度は昨年度と同等か、やや易化した形となりました。

〔問題1〕展開図から面積を求める問題
 提示されている展開図と2人の会話から、展開図の面積を求める式と答えを出す問題でした。解くためのヒントは少ないものの、展開図から組み立てたときにどの辺とどの辺が重なるのか、円周率である3.14 を使った小数を含めた四則演算が正確にできるかがポイントです。面積を求めるための式と答えを出すといったシンプルな問題ではありますが、算数の基礎となる正確な計算力が必要となるため、日頃から小数のかけ算やわり算の演習を積むことで、早く正確に計算ができる力を養っておくとよいでしょう。

〔問題2〕立体を組み合わせることで立方体を作る問題
 途中まで組み上げられている立体に、2種類のブロックをいくつか組み立てることで立方体を作る問題でした。一見、途中まで組み上げられている立体が複雑に見えますが、2種類のブロックのうち1種類しか合わない場所があるため、そのことに気づけたかどうかが正否の分かれ目となりました。図てから見た右の1列、正面の手前1列については1種類のブロックのみ組み合わせることができ、残りの8ヶ所を2種類のブロックで作る必要がありました。空いている形が複雑なところから埋めていくパズルに近い問題で、ブロックを埋めた後の形が正確にイメージできる、もしくは図にかくことができれば、解きやすい問題でした。

2⃣ 歴史をテーマにした問題
 今年度は〔問題1〕から〔問題3〕まで、全て自分で解答する項目や使う資料を選択し答える問題構成で、限られた時問で答えやすいものを選択する必要がありました。全体の文量は例年と比較して多くはなく、使う資料も複雑ではないため、全体として平易な問題でした。

〔問題1〕会話文・資料を用いてわかりやすく説明する力を見る問題
 奈良の大仏と鎌倉の大仏のうちどちらかを選び、その建造について、材料の産地や当時の社会の様子にふれながら説明する問題でした。奈良の大仏を選んだ場合は、会話文より当時の全国各地で病気や災害が起こるなど社会全体に不安があったことをふまえ、資料1より奈良の周辺の地域から銅を集め、大仏を建立したことを書けばよいでしょう。また鎌倉の大仏を選んだ場合は、会話文より当時鎌倉幕府が近畿地方の朝廷に対抗しようとしたことと、国内の銅山で銅が取れなくなっていたこと、資料2より日宋貿易を通して精錬された鍋を輸入していたことを読み取り、大仏を建立したことを書けばよいでしょう。会話文や資料の中の情報の具体度の差から、奈良の大仏を選んだ方が解きやすい問題でした。

〔問題2〕人口密度を計算し、計算した結果をもとに考えられることを答える問題
 江戸時代の武家地または町人地のいずれかを選び、人口密度を求めたうえで、それぞれの人口密度の数値を比較しながら江戸時代の武士または町人の生活について考えられることを述べる問題でした。人口密度の計算については、的確かつ素早く計算する力が求められます。その際、小数第一位を四捨五入し、整数で答えるという条件に注意しましょう。武士と町人の生活について、どちらを選ぶ方がよいかについては、会話文より武士の生活に関することについて、参勤交代でやってきた家来たちが大名屋敷で暮らしていたことを読み取ることができますが、人口密度が町人地よりも小さいことをふまえて書くことは難しいと言えるでしょう。対する町人の生活については会話文より、多くの町人が江戸に住むようになり、にぎわいを見せ、江戸の町が拡大していったことが読み取れます。つま武家地よりも町人地の方が人口密度が大きいことをふまえ、より人が集まっていた町人地の町人たちの生活は活気があったことを述べる方が解答しやすいでしょう。ただ会話文にヒントはあまり多くはなく、なおかつ人口密度と関連させてそれぞれの生活について書くことに答えづらさを感じた受検生もいるかもしれません。限られた時問でよりヒントが多く与えられているのはどちらなのかを判断することが求められる問題でした。

〔問題3〕会話文・資料を用いて変化についてわかりやすく説明する力を見る問題
 資料4から資料7までのいずれか二つを選び、資料から読み取れることを踏まえて高度経済成長期における東京都民の暮らしの変化について説明する問題でした。資料4は勤労者世帯の平均月収額、資料5は東京の人口、資料6は東京都における自動車の保有台数、資料7は東京都の新設住宅着工数に関する資料です。複数資料を活用する問題では、組み合わせる資料同士の関係を意識する必要がありました。今回は、前者2つの資料のいずれかが後者2つの資料のいずれかと因果関係で結ばれます。つまり、資料4より東京都の平均月収が増えたために、資料6の乗用車の保有台数が増えた、あるいは資料5より東京都の人口が増えたことに触れたうえで、資料7の新設住宅着工数が増えた、のいずれかを書けばよい問題でした。それぞれの資料について、会話文に具体的な説明が書かれているため、資料の読み取りは易しいものであること、また資料同士の関係性もわかりやすく、平易だと言える問題であり、確実に得点したい問題でした。

3⃣ シャボン玉の性質について考える問題
 近年の傾向通りの問題でしたが、例年よりも会話文が少なくなり、実験の手順の説明が詳細化されました。問題文中の表現も含めると、これまでであれば実験結果の着眼点を示唆するだけであったものが、それに加えて検証の仕方まで示唆されるものとなっており、大幅に解きやすくなったと言えます。しかし、思い込みなしに丁寧に問題文を読み取らないと、読み取り方が問違いやすい箇所があり、落ち着いて処理できたかどうかが重要でした。共同作成の適性検査山は、算数系の大問1の方が難度の高い年度と、理科系の大問3の方が難度の高い年度があります。今年度は解答の記述量の面で、大問3の方が難度が高かったと言えるでしょう。適性検査全体の難度が例年よりも易化したことと合わせて考えると、学校によっては合否の決め手となる大問と言えます。なお、シャボン玉とその体積、割れ方などを題材とした問題は後期日曜特訓第14回の適性検査I大問3と同一でした。このため、enaの後期日曜特訓を受講している多くの受検生は、大変取り組みやすい問題だったと言えます。

〔問題1〕シャボン玉の割れやすさに関する問題
 シャボン玉は砂糖水から作ると割れにくい、ということについて、望ましい濃度を探る実験についての問題でした。食器用洗前、濃度、などのキーワードは、令和4年度の問題を考様させます。あくまで題材の近さであり、問われているものは異なりますが、問われているものを正しく読み取ると、実は令和6年度の(問題1)ととても似ています。条件を1つ変化させた実験2つの結果をふまえて答えを出す、結果をただまとめるだけでなく、その内容を換言する一手問がある、という特徴が踏題されています。そのため、近年の過去開をしっかり解きこんでいった受検生にとっては解きやすい一問でしたが、完全に正解した受検生はそこまで多くないと思われます。鍵となるのは前述の「換言」で、問われているのはシャボン玉の「体様」の比較ですが、資料には体積ではなく、空気入れを押した回数がまとめられています。「回数が多い→シャボン玉に入れられた空気が多い→体積が大きい」という置き換えを正しく説明しきれているかどうかが記述のポイントになります。こういった問題で点数を取り切れるように、過去問の演習をする際には、ただその問題を例題として扱うのではなく、肝となる部分はどこか、を意識して行うとよいでしょう。

〔問題2〕シャボン玉の時問経過による割れ方に関する問題
 時問経過により、シャボン玉のまくをつくる液が徐々に下部にたまっていき、薄くなった上部から割れていくことについての実験結果の考察を答える問題です。実験の手順と結果は大変分かりやすく示されており、結果に対しての考察の検証をする実験まで行っていますから、現象についての理解は平易でした。そのため、この問題における得点の差は、問題文の条件通りに解答を作ることができているかどうかによるものが大きいでしょう。適性検査の問題文としての正しい読み取り方をすると、解答には4つの要素を入れなければなりません。それを正しい言語表現でまとめられたかどうかが重要でした。特に、前述の日曜特訓の問題で、現象(時問経過により、シャボン玉の液が下へいくことで、上部がうすくなり割れる)について問うほぼ同一のものを経験していますから、enaで日曜特訓を受講している受検生には特に解きやすい一問であったと言えます。



〔適性検査Ⅲ〕

〈出題形式〉
 令和4年度以前の傾向と同じく、大問1では立体図形を含む算数分野、大問2では実験を組み立てる問題を含む理科分野からの出題でした。問題数に変化はありませんでした。 

1⃣ 図形や場合の数に関する問題
〔問題1〕仕切りのある容器に入れられた水のたまり方を考える問題
 仕切りのある容器に水を入れていき、どのように水がたまっていくかを考える問題は、私立中では頻出の問題の1つです。しかし今回は、その仕切りの場所を自分で決めて、4番目に満水になる空間がどこで、それは水を入れ始めてからどのくらい時間がたったときなのかを答える問題でした。このように、自分で設定を行える問題が出題された場合には、なるべく簡単になるものを選ぶのが鉄則です。2段目の仕切りは、どちらにしても1マス分の空問と2マス分の空間に分かれるだけで、本質的な違いはありません。ここで、3段目の仕切りの置き方がポイントとなります。2段目で1マス分にした空間は、必然的に2番目に水になり、そこからあふれた水は、2段目で2マス分にした空問と、3段目に入っていくことになります。この3段目に入っていく水を、1マス分の空間で受け取るようにすると計算がスムーズに行えますが、やや難度が高い一問であったと言えます。

〔問題2〕横型を作るのに必要な資材の量を求める問題
 〔問題1〕でも使われた容器を拡大した模型を作るのに必要な、資材の量を計算で決める問題でした。見取り図で隠れている場所が多く、正しく正方形の枚数を数えるのは平易ではありません。正方形の枚数が分かれば、模型の面積を指定の 150000㎠から 185000㎠までになるように1辺の長さを計算すればよいのですが、正方形の面積から1辺の長さを直接計算することは小学生の学習範囲では難しく、予想しながら計算していく必要がありました。そのため全体として難度が高く、差のつきにくい問題でした。

〔問題3〕 条件を満たす最短経路の場合の数を求める問題
 あぜ道を最短経路で見回る道筋について、最短経路の場合の数を決める問題でした。それ自体は頻出のテーマですが、今回は往復し、しかも往路で通った道は復路では通れないという条件があるため、考えるのには時間がかかった受検生が多かったと思われます。場合の数を決める問題では、上手に場合分けをしていくのが定石です。最初にイから出発するときには、図の上方向か右方向のどちらかにいくしかありません。そして最後にイに帰ってくるときは、出発が上方向だったなら右方向から帰るしかなく、出発が右方向だったなら上方向から帰るしかありません。エに到着するときとエを出発するときも同様なので、この観点から場合分けをして考えていくのが比較的数えやすい方法です。問題自体の難度がそこまで高いわけではありませんが、時間がかかることと、作業量が多いためミスが生じやすいことから、加点するのは難しい一問でした。

2⃣ 気体と熱の伝わり方に関する問題
〔間題1〕燃焼の様子について、気体の種類と割合の条件を考察する問題
 気体の成分と燃え方の関係を実験結果から読み取り、ろうそくが空気中と同じ燃え方をするような気体の種類と割合の条件を答える問題でした。基本的な対照実験の考え通り、1つの条件だけが異なるものを見ていけば、酸素の割合だけで燃焼の様子が決まっていることに気づきます。あとは条件通りの解答を出せばよいです。燃焼の条件として、「十分な酸素がある」「燃えるものがある」「燃えるのに必要な温度以上である」の3つがあることを知識としておさえてあると、さらに素早く解くことができます。必答問題と言える難度でした。

〔問題2〕目的に対して具体的な操作の手順を考える問題
 太さが一定でない容器について、与えられた道具を用いて、中に入れる気体の量を50%にするための具体的な手順を考える問題でした。令和5年度以前に毎年出題されていた、実験の手順を考える問題の一種と言えます。設問の中で、「ペットボトルの向きは自由に変こうしてもよい」とあるため、この点をうまく利用しましょう。もし、気体と水をちょうど50%ずつ容器に入れられれば、ペットボトルを上下反対にしても、水面の位置は同じになるはずです。反対に、どちらかが多ければ、ペットボトルを上下反対にすると水面の位置が変わってしまうはずです。これを利用して、気体の量が50%になる位置を決めることができます。実験手順を考える問題は必答問題と言えるでしょう。

〔問題3〕実験結果から素材の熱の伝わりやすさを考える問題
 素材の異なる容器に入れたお湯の温度の変化から容器の素材を答える問題でした。下線部の先生の発言内容から、まず注目すべきは、①お湯を入れて1分後のお湯の温度、②その後の温度変化、の2点であると分かります。これは実験5を読み取ることになりますが、温度の下がり方が大きい順に3つを並べ替えると、①を考えたときと②を考えたときで順番が変わります。この違いを、実験3や実験4の結果をもとに考えて説明することになります。力の差が出やすく、合否を分けた一問と言えます。




東京都立武蔵高校附属中等教育学校 2024年度

〔適性検査Ⅰ〕共同作成問題

文章1:東直子「生きていくための呪文」による
文章2:藤田 真一『俳句のきた道 芭蕉・蕪村・一茶』
〈出題形式〉
4000字程度の文章が1題の形式で、読解問題2問、作文問題1問の例年と変わらないスタイルですが、前年度に比べて文章量は2倍近く増えました。また、ここ2年姿を消していた作文の条件指定が再登場しました。読解問題の字数は合計最大105字、作文の最大字数が460字となり、昨年よりは書く分量がやや減少した形です。テーマは「インターネット上で個人の好みに合った情報が自動的に選択される仕組み」についての説明と生命の子見不可能な存在であることを対比させて「人間は予見不可能な創造的 進化を遂げる」ものであることを述べています。SNSなどで同じ動画を見ても、それぞれの感じ方は個性によって異なるという筆者の考え方がとらえることができれば難しい内容ではありません。

(問題1)問われている内容に一致する具体例をそれぞれの文章から探し記述する問題
 短歌・俳句をくり返し唱えたり、思い浮かべたりすることに、どのような効果があるのかを答える問題です。空欄を補充する形で答えるので「という効果」につながるような言葉を使っていきます。前年度・前々年度でも今回の問題のように字数が指定されていないものが出ています。また今回は、「文章1・文章2で挙げられている例を一つずつ探し、解答らんに合うように答えなさい」という指示があります。ポイントは各文章からそれぞれ一つずつ 例を探すということです。例ですので、抽象化されたものではなく具体例に注目します。そして「探す」ということなので、字数の指定などはないものの、ほとんど抜き出す形式に近いと言えます。まずは文章1・文章2のそれぞれから「短歌や俳句をくり返し唱えたり、思い浮かべたりする」という動作に該当する例を探していき、その動作によってもたらされる効果・影響が書かれている部分を、「という効果」につながる形に直して、書いていきます。抽象・具体を区別する必要があり、普段の演習時から、これらをしっかり区別して読解をおこなっているかどうかが、解く上でのポイントになっていました。

(問題2)文章2の傍線部に関連する二文を、文章1から抜き出し記述する問題
 文章2の傍線部について問われ、文章1から連続する二文を探して、最初と最後の4文字を答える問題です。これまでの共同作成問題で何度も出されてきた文章横断型の問題ではありますが、今までは傍線部がある文章から大まかな情報を整地して、もう一方の文章から探す答えの方向性を絞るという作業が求められました。しかし今回は、文章2から得られる傍線部に関する情報はほとんどなく、「文章1の筆者は、短歌を読んで どのような情景を想像しているでしょうか」という問いから考えていけばよい問題でした。文章1から短歌を読み、その内容から何を想像しているかということに注意して読んでいきます。冒頭の岡本かの子・与謝野晶子の短歌の後に、「桜の咲くころ~と浮かぶ。」という部分がありますが、連続する二文を情景として抜き出すことを考えると、その後の文が答えとして考えることは難しいです。次に大西民子の短歌の後にも、想像している情景として読み取れる部分があり、この「青い空」に関する記述を抜き出す必要がありました。文章2を踏まえるという過程があまり求められず、文章1から情報を探す際にも、ややわかりにくいものになっているので、この問題に時間をかけてしまうことがないように気を付けなければいけない問題でした。

(問題3)二つの文章のいずれかの考えに触れ、自分の考えを書く問題
 これからの学校生活で仲間と過ごしていくうえで、言葉をどのように使っていきたいかの考えを述べる問題です。また文章1・文章2の筆者の、短歌・俳句に対する考え方のいずれかにふれることが条件になっています。したがって、まずは短歌・俳句に対する考えを読み取ったうえで、自分にとって書きやすいほうを選択する必要があります。文章1は短歌や俳句を何度も唱えることで、自分の気持ちを前向きに変えることができるという内容であり、文章2は表面的な言葉だけを見るのではなく、日々生活を送っている人々の気持ちを想像して勉強していくうちに、すばらしい俳句が生まれるという内容です。言葉によって気持ちを前向きにできるという内容の文章1の方が、学校生活で仲間と関わるうえで使っていく言葉に関する考えは書きやすいと思われます。選んだ文章の内容にふれつつ、その内容に寄せた自分の考えとその根拠などを、学校生活で想定される例とともに書いていけばよいでしょう。近年の作文問題の字数は、400字以上440字以内の傾向が続いており、各段落に各内容についても詳細なものは指定されていません。つまり指定字数の中で、ある程度自分で構成を考えた上で書いていく近田が求められているのだと考えられます。また今後の学校生活を意識する内容も続いているので、中学校生活での例を挙げられるように、対策をしていく必要があるでしょう。

〔適性検査Ⅱ〕

1⃣ デジタル数字を題材にした問題(共同作成問題)
 1⃣は前年同様小問2題のシンプルな構成でした。どちらの問題もデジタル数字を題材としたパズル要素の強いものとなっています。条件に合わせて考える力が必要でした。全体的にここ数年の中では取り組みやすい難易度となっています。

〔問題1〕条件に合う作業の分担方法を考える問題
 マグネットシートから棒状のマグネットを切り取り必要な個数をつくる問題です。花子さんと太郎さんで「かく」作業と「切る」作業を分担して行い、45分未満ですべての作業を終わらせます。作業する人によってかかる時間が違うので、どう組み合わせるべきなのか当たりをつけて解き進める必要があります。太郎さんはマグネットシート1枚当たり「かく」作業に10分、「切る」作業に5分かかり、花子さんは「かく」作業も「切る」作業もマグネットシート1枚当たり7分かかります。問題文の条件より、最初の作業は同時に始めないといけないため、最初の作業は二人とも「かく」作業になります。その後は、「かく」作業が太郎さんより速い花子さんはずっと「かく」作業を、「切る」作業が速い太郎さんはずっと「切る」作業を、という風に分担すれば45分未満で作業を終えることができます。ルールをきちんと把握していれば、記述する内容も単純なので、比較的得点しやすい問題でした。

〔問題2〕最短時間で操作を完了させる方法を考える問題
 ルールに従って、指定された3けたのデジタル数字を最短時間で作る方法を考える問題です。「マグネットをつける操作(2秒)」「マグネットを取る操作(2秒)」「数字の書かれたポードを180度回す換作(3秒)」「2枚のボードを入れかえる操作(3秒)」を組み合わせて考えます。本間では456から987にする場合が問われています。回転と入れかえはそれぞれる秒かかってしまうものの、入れかえを行わずに456を987にすることを考えると、どうしても時間がかかってしまいます。したがって、できるだけ効率の良い手順で入れかえを行う必要があります。会議文で6を回転させると9になることが説明されているので、6を回転させて9にしてから4と入れかえ、4を7にすることを考えます。真ん中の5はマグネットを2本加えれば8にできます。しかしこれが「最短」の方法であることを確かめようと思うと時間がかかりますので、確実に得点するという観点で言うとやや離しい問題だったように思われます。

2⃣ 鎌倉時代から明治時代にかけてのお金と銀行について考える問題
 〔問題1〕は鎌倉時代における近畿地方の土地の価値の装し方について、表を用いて答える問題でした。〔問題2〕は選択した組み合わせの小判について、小判とその価値の変化を答える問題でした。〔問題3〕は1893年に急数に銀行の設立数が増えた理由について、会話文をもとに答える問題でした。近年、武蔵中ではSDGsに関する問題が多く出題されていましたが、今年は歴史がテーマの出囲でした。また、近年験出だった課題解決型の問題もなく、いたって標準的な資料や会話文の読み取りの問題が中心となりました。会話文の量も多くなく、資料もわかりやすいものだったので、全体的に例年より平易でした。2⃣を取りきることが適性検査日の得点のカギとなったといえるでしょう。

〔問題1〕表をもとに変化について読み取る問題
 選んだ地域の鎌倉時代における土地の価値の表し方の変化について、時期、地域、数値に注目しながら答える問題でした。変化について問われているときは、それぞれの値が増加・減少または横ばいのいずれかになることを意識することが重要です。今回はどの地域を選んでも変化を読み取ることができますが、特に変化の大きい地域を選ぶと書きやすいでしょう。表と会話文から、当時の近畿地方では米や布の量または銀で土地の価値を表していたことが読み取れます。山城を選んだ場合は、米や布などを使う件数が年々減少し、銭を使う件数が増加していること、大和あるいはその他近畿地方を選んだ場合は、米や布、そして銭を使う件数の両方が増加していることについて書く必要があります。

〔問題2〕グラフをもとに計算し、その結果を考察し変化を答える問題
 選んだ小判の組み合わせについて、資料からわかることと資料から求めた小判の金の含有量をもとに、小判とその価値の変化について答える問題でした。慶長小判と元禄小判の組み合わせは小判の重さが、安政小判と万延小判の組み合わせは金の含有量の割合が同じだったため、金の含有量を水める計算自体は難しくありません。しかし、単なる数値の変化だけでなく、それを通して「小判の価値がどのように移り変わったのか」まで書く必要があるため、問われていることを意識しながら書くことが重要でした。会話文から小判は作られた時期により大きさや重さが異なること、金の含有量が決ると貨としての価値が下がることが読み取れます。するといずれの組み合わせも金の合有量が減り、小判の価値が下がっているので、あとは小判の大きさに触れながらそのことを述べればよいでしょう。

〔問題3〕会話文をもとに理由を説明する問題
 1893年に銀行の設立数が急増した理由について、会話文をもとに答える問題でした。その際、直接的な理由だけでなく、銀行設立に至った背景にも触れる必要がありました。会話文から国立銀行ができたことで大都市だけでなく、地方でも会社や工場を作ろうと考える人が増えたことがわかります。そしてその後、銀行へお金の借り入れ希望が増えたことで、国立銀行とは基準の異なった普通銀行が設立され、さらに貨幣の枚数と会社へ貸し出すお金の量が増えました。特に1885年~1887年の3年間で会社や工場が増え、さらに 1890年の産業革命以後、綿糸に関わる工場も増加し、以降工場の建設や機械の導入に多くのお金を必要とするようになりました。これに対応するため 1893年には銀行条例が出され、銀行が作りやすくなった結果、銀行が急増したということです。これらの情報は会話文からすべて読み取れますので、あとは問いに正対するようにわかりやすくまとめる力が求められました。

〔適性検査Ⅲ〕

〈出題形式〉
 前年度の入試では大問2の一部が算数化しましたが、今年度は元に戻り、 1⃣で算数、2⃣で理科の分野から出題されました。また、例年の傾向と異なり、算数では立体図形の出題が無く、理科では実験を組み立てる問題の出題がありませんでした。 

【大問1】図形や規則性に関する問題
〔問題1〕平面図形を転がしたときの頂点の軌跡を答える問題
 直線状で円や正多角形を転がしたときの頂点の軌跡を考える問題は私立中では頻出です。しかし今回は円や正多角形のようなシンプルな図形ではなく、歪な五角形を転がします。仮にコンパスがあったとしても正答するのはかなり困難であり、ほとんどの受検生は回避するか、とりあえず埋めてみただけで次に進んでいました。あまり差のつかない一問であったと予想されます。

〔問題2〕規則性について考える問題
 2種類の記号の並びが8個続いている状態から、128個目の記号を予想する問題です。並んでいる8個の記号は0と1で表すと「01100001」となっており、それぞれの記号が1個、2個、4個、…と続いていることがわかります。次に並ぶ記号の個数を7個(階差数列)とするか8個(等比数列)とするかで128個目の記号が変わります。128が2の7乗であることから、等比数列とした方が答えやすくなります。合格のためには必ず得点したい一問です。

〔問題3〕 円を複数個組み合わせた図形の作図に関する問題
 半径30cmの円の内側に、半径12cmの円をぴったり5つ並べた図形を作ることができないことを説明する問題です。ぴったり入っている5つの円の半径を12cmとしたとき、その中心同士を結んだ五角形の周の長さが、五角形の外側に接する円の円周よりも長くなることを示すことで矛盾を導きます。 円周率が3以上であることを説明する際に、円の内側に接する正六角形を考えるのと同様の思考の仕方です。小石川中でも「できないことの説明」がよく出題されており、仮に武蔵中志望だとしても、他の都立中の勉強は必須であることが再確認できた問題でした。合否を大きく分ける一問であると予想されます。

【大問2】液体の蒸発や冷凍に関する問題
〔間題1〕液体の蒸発に関する問題
 濃縮還元ジュースとストレートジュースの製造方法のメリットをそれぞれ答える問題です。濃縮還元ジュースは輸送コスト、ストレートジュースは製造方法の容易さにそれぞれふれればよいことになります。必ず正答しておきたい一問です。

〔問題2〕液体の蒸発に関する問題
 水と砂糖水の蒸発速度の違いについて考える問題です。与えられた資料を分析するのは容易ですが、答える際に資料の情報をどこまで記述すべきか迷う受検生は多かったのではないでしょうか。理解は容易でも答えにくい一問でした。

〔問題3〕液体の冷凍に関する問題
 砂糖水をビーカーで凍らせたとき、真ん中付近の糖度が高くなり、外側の糖度が低くなる理由をお えます。(問題2)と同様、与えられた資料の分析は容易です。答え方も(問題2)よりシンプルな解答が子想されるため、正解しておきたい一問です。