私立中学の国語入試に採用された書籍をご紹介します。 入試の傾向分析をしたり、問題で採用された箇所の気になる続きを読んだりなど、普段の読書のヒントにもお役立ていただけます。
2024/2/14(水)
個性を大事にとは言われるけれど、浮きたくない、「普通」がいい――と、どこかで感じていることがありませんか。
もしくは、どこにいても自分がなじめない違和感を抱くことはありませんか。
正直言って著書の言葉はかなり辛らつです。
しかし、日々が窮屈だと思ったとき、自分や他者に向き合いたいとき、
この本はあなたを動かす救いの本になるかもしれません。
2024/2/7(水)
6つの短編が収録された物語集です。
作者の最上さんは山形出身、本書でも方言を用いた会話劇が特徴的。
恐らく最上さんが体験した時代設定のため、入試では読みにくいと感じた受験生もいたかもしれませんね。
ふとしたことで気持ちが揺れ動く瞬間の描写、人間関係の変化というのは
小説問題の「あるある」ですが、解答を忘れて展開が気になってしまいます。
雪深い農村で決して楽とはいえない環境でも、たくましく育つ子どもたち。
言葉の重みを感じる物語が詰まっています。この本で作者は日本児童文学者協会賞新人賞を受賞しています。
2024/2/28(水)
不思議な世界観、温かみのある話、妄想?のような話など、
さまざまな印象を抱かせる9つのストーリーが収録された短編集です。
読書は新たな視点を投げかけてくれるものではありますが、本書も話ごとに自分の見方を増やしてくれる気がします。
なお、本書には面白い仕掛けになっている作品がありますが、
勉強の合間にはまってしまうかもしれませんので注意が必要です!
2024/3/6(水)
味覚、嗅覚、触覚、聴覚、視覚。
五感について、それぞれの感覚から呼び起こされる問題提起や文化的なエピソードの紹介だけにとどまらず、
身体全体で幸福を感じるための哲学入門書になっているのが興味深いです。
身体、そして感覚を通じて感性を研ぎ澄ませ、身の回りのものを見つめ直してみましょう。
2024/4/17(水)
入試問題本文では、メルケル元ドイツ首相のテレビ演説と、
物理学者でありながらプロテスタントのキリスト者としての信仰を語った彼女の講義録の内容が引用され、
コロナ禍以降の状況を交えながら私たちの心の在り方を説いているのが印象的でした。
「弱さ」を受け入れ向き合う姿勢は、社会全体にも必要になっている時代であると感じます。
2024/4/10(水)
とある家族のそれぞれが主人公となって一話ずつ進んでいく連作短編。
「男なのに」刺繍が趣味の高校生清澄は同級生たちからからかわれ、周囲から浮いてしまいます。
それでも清澄が進み続ける理由は――。
家族もそれぞれの葛藤を抱え、時に衝突しながら乗り越えていこうとします。
「属性」を超えて人とつながることはできるのか。通底する「水」のイメージも美しい作品です。
2024/5/29(水)
タイトルやぱっと見の表紙のイラストの朗らかさとは裏腹に、
扱っているテーマは小学校という舞台だからこそ起こる「問題」。
誰が悪い、誰がいい人というのではなく、まんべんなく多くの視点で描かれており、「児童読み物」ですが、
教育に関わる大人・保護者の方が読むべき本でもあります。集団内のルールは誰のため、何のためにあるのか。
学校は大人からの押し付けでできているのではなく、民主主義を実践する場所なのだとも感じます。
この本をきっかけに、親子や友達同士、先生と生徒、いろいろなテーマで語り合うこともできそうです。
2024/7/24(水)
タイトル通り、姿勢や呼吸、身体を動かすことによって心理的な変化をも生み出すという内容です。
心理学を扱っている書籍には珍しく、実際的なワークとして心身を健康にするための動きについても紹介されており、思わず試してみたくなります。
少しクヨクヨしたり、勉強や仕事に行き詰まりを感じたりしたときに体を動かすヒントになりそうです!
2024/6/5(水)
とある町に住む11歳から42歳までのフツーの人々の、
ささやかで何気ない日常を切り取った10編の短編集です。
主人公たちはそれぞれの環境・人間関係に置かれ、悩みを持っているけれど、
その人なりの選択を何だか応援したくなります。
それでいてちょっとしたエールを自分にも向けたくなるような作品たちです。
2024/3/22(金)
皆さんは、普段自分の想い、感情を詩にのせて表現することはあるでしょうか?
本作は様々な人間模様をもとに登場人物が俳句の世界に魅せられ、
周りの人々との関わりから自分の気持ちを表していく青春ストーリーとなっています。
悩み、不安を抱えている現代でも物語性があるのでスッと入り込める作品です。
2024/3/13(水)
小林秀雄賞受賞の独立数学者による、生命・環境についてのエッセイ集です。
コロナ禍の2020年春から日記のようにつづられ、四季を通じて著者の思考をたどるような読書ができます。
「人生」(「自分」だけでなく、人類すべて)と「自然」をむすびつけ、
多様なスケールで両者を見つめるヒントをもらえそうです。
2024/3/27(水)
アイヌ民族と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?
失われ、滅びていく種族、そう思うかもしれません。
しかしアイヌ語、アイヌ民族の想いから大切なものは見いだされ、読者にも共感を呼ぶような内容となっています。
あまり現代では考えることの少ない、違った世界で生きる人々の人間模様を本作を通して味わってみてはいかがでしょうか?
2024/4/3(水)
大人気冒険譚シリーズ『精霊の守り人』『獣の奏者』の作者による自伝であり、
自らの作品だけでなく「物語」や「社会」、大きく「世界」に対する想いをつづった渾身のエッセイ集。
文化人類学者であり作家でもある上橋さんのメッセージは、
夢を追う人、まだ見ぬ世界へのあこがれを持っている人なら、きっと響くはずです。
2024/5/15(水)
引っ込み思案な高校2年の鈴美が、ある事件をきっかけに同級生の比呂と出会う。
理不尽なこと、人と人とのしがらみがあるなかでも、何に対してもまっすぐな比呂に触発されるように
自分の弱さを認めつつも前を向いていく鈴美の成長に目が離せません。
単なる青春物語とひとくくりにできない、幅広い層の読者ひとりひとりに「刺さる」言葉があるように思います。
2024/5/8(水)
身近なものの値段から経済学を考える入門書です。
入試の本文で初めて目にした受験生は算数で売買損益を学習済みであるとはいえ、出題に面食らったと思いますが……。
ものの値段が付けられる市場の仕組みをわかりやすく説明しています。
中学で公民を学ぶ前に知っておきたい知識ばかりです。
2024/6/12(水)
「学術会議任命拒否問題」を受けて、26名の作家・研究者・ジャーナリストらの現代日本を取り巻く「自由」を問う論考が並ぶ。
第一章の中心テーマである学問・学術の自由だけでなく、第二章・第三章と続いて「自由」の意義が広範囲にわたり語られるが、
今声高に語られる理由は、あらゆる問題の根本にある「人権意識の希薄さ」に関係していると思われる。
先人が獲得してきた自由を無下にしないようにするにはわれわれはどうすべきか。
2024/7/17(水)
国語入試によく出題される「日本語論」というジャンルのなかでも、
本書の内容が日本語起源と文字・縦書きの歴史に立ち返っているのが新鮮に思えるほどに、
われわれの生活はパソコンやスマホの入力方法による「横書き文化」に染まっていることがわかります。
書くという行為が昔と今の日本文化にどのような影響を与えているのか。
本書を読んで、思わず姿勢を正して筆をとってみたくなります。
2024/7/3(水)
皆さんは本当の「読書の仕方」、「本物の読解力の育て方」を知っていますか?
本編では、今の子供たちの表現する力不足、
なぜコミュニケーションで障害が起きるのかなど社会的なテーマに焦点を当て、人と人との「対話」の重要性について語りかけています。
これからの人生、「大人になる過程」の第一歩として読んでみてはいかがでしょうか?
なお余談ですが、本文中の「子どもの将来を考えるなら、親自身が科学的知見を踏まえてしっかり考えて、守ってあげる必要があるだろう」
という内容を、最終問題で「受験生=子ども本人」に具体的に答えさせる出題には唸りました!
2024/6/26(水)
リアルでもSNS空間でも、人間関係のつながりが強調される昨今ですが、
青年期における孤独感は古今東西どのように語られてきたか丁寧に解説しています。
「ソロ活」もできるし大丈夫!という方も、今一度「さみしさ」という感情や、
「孤独」であることの意義を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
2024/6/19(水)
情報を相手に正確に伝えるために昨今ますます「論理性」はコミュニケーションに必須の要素になっている。
(学校の国語にも「論理」がつく時代だし……。)
しかし、コミュニケーションにおいてはどうだろう?
私たちがうまく相手とやりとりできないのは、「非・論理」の力が潜んでいるからだ。
そこを論理的に詰めていくと、無駄にいらいらしないかも。大人になる前に読んでおきたい「コミュ力」の本。