Camp+では、各中学・高校・大学の過去問について、傾向と分析を詳細に解説しています。都立中・都立高を中心に最新の過去問を大問ごとに分類し、傾向が一目で分かります。
〈文章・出典〉
文章A 梶谷真司「問うとはどういうことか 人間的に生きるための思考レッスン」
(一部改変)による
文章B 辰濃和男「ぼんやりの時間」による
〈出題形式〉
問題の出題形式は昨年度までと同様で、二つの文章を読み、それぞれの文章についての読解問題が2問と400字以上500字以内で書く作文問題という構成でした。文章の字数は、昨年度が文章A・B合わせて1800字に対して、今年度は約2600字と増加しています。文章Aは「お互いの考えや気持ちをより深く理解するために問いかけることが大事だ」、文章Bはミヒャエル・エンデ作の、「モモ」を題材とした「ぼんやりとしたむだな時間を過ごす生活の大切さ」を述べています。文章Bのテーマは令和3年度の南多摩中でも出題されており、他校も含めた過去の適性検査の問題を解いていた受験生には有利だったと言えます。独自作成問題ではありますが、共同作成と出題のしかたやレベルがほとんど変わらないものとなりました。高得点勝負になると思われます。これから受験される方は、桜修館の令和3年度以降の過去問や共同作成はじめ独自作成の過去問に取り組むとよいでしょう。
〔問題1〕文章の内容を指定された字数で説明する問題(50字以上60字以内)
一昨年度までの具体例を用いて説明する問題や昨年度の□の中に指定された字数で答える問題から、ごく一般的な記述問題に変わりました。難度が高かった昨年度と比べてかなり易しくなりました。文章Aを読み「それによって私たちははじめて、たんに知っているという表面的な次元の向こうへ深く入っていくことができる」を説明するのですが、「それ」の内容や「表面的な次元の向こう」をきちんと言い換える必要があり、基本的な読解力と記述力が問われました。
〔問題2〕文章の内容を指定された字数で説明する問題(60字以上70字以内)
文章Bを読み、「ぼやーっとしている時間はそれこそむだそのものだ」という傍線部について「そのように考えている人の生活について、筆者の考えをふまえて説明する」という問題でした。まず筆者の考えを確認すること、むだをむだだと考える人の生活について書いてある箇所を探すことが必要になります。傍線部は最初から3行目にありますが、解答の要素となる部分は傍線部の直後と文章の最後部にあります。後ろから二段落目の「利潤とか、効率とか、管理とか、豪華さとか、スピードとか、そういうものを生活のよりどころとする人びとが増え、夜空をながめるなんてむだなことだ、と思う人が増えてきた」という部分と傍線部直後の「むだな時間をいくら重ねてもなんの稼ぎにもならない」から、むだをむだだと考える人の生活が分かります。また、その直後の「しかし、そのむだは本当にむだなことなのか。そういうむだがあるからこそ、くらしはむしろ、ゆたかなものになっているのではないか」から筆者の考えもわかります。ここから答えをつくるのですが、「むだをむだだと考える現代人=時間どろぼう=まずしさ」と「むだこそがゆたかさにつながるという筆者=モモ」との対比関係も理解して答えをつくる必要がありました。昨年度とくらべると平易ですが、おさえるべき要素が複数あり文章をきちんと読む力と記述する力が問われました。
〔問題3〕それぞれの文章の内容をふまえて作文を書く問題(400字以上500字以内)
二つの文章を読み、一見むだに見えるけども本当は大切だと思うことについて体験をふまえながら400字以上500字以内で書く問題でした。第一段落には一見無駄に見えるけれども本当は大切だと思うことについて書き、第二段落よりあとに体験と考えを書くという指示がありました。文章Aでは前述したように、「深く理解したいという疑問から問いかけをする」ことが書かれていて、「むだ」とは関係がないと思われます。文章Aから「表面的な理解」でも事足りるが、でも深い理解をした方がよくてそれがむだと結びつく」とは読み取れないので、文章Bを題材として作文を組み立てるのがよいでしょう。文章Bには「利潤とか、効率とか、管理とか、豪華さとか、スピードとか、そういうもの」とは正反対のむだなものが大切だ」と書かれています。利潤や効率やスピードを求めない、例えば、自動車に乗らずに歩いていたらきれいな夕焼けに気づいてゆたかな気持ちになれた、というような体験が書けていればよいでしょう。
1⃣ 条件をもとに考える力をみる問題
令和4年度から4年連続で小問数が3つ出題され、そのうち1問は記述問題でした。また、すべての問題が「考えられるもののうちの一つ」を答えさせる問題でしたが、令和6年度の〔問題3〕のような複数ページにわたっての説明などはなく、ページ数が5ページから3ページに減ったため、受験生にとっては取り組みやすかったかと思われます。3問中2問は確実に正解したい問題でした。
〔問題1〕条件をもとに調べ上げる問題
12人の飼育委員が毎週5人ずつ当番制で、一人がメダカの水そうの水かえ、次の二人がウサギのえさの取りかえ、残りの二人がビオトープの掃除を行うことが読み取れます。あとは15週間で「いつ、だれが、どの当番をするのか」を表などで整理すれば正解にたどり着くことができました。確実に正解したいところですが、調べ上げるのに時間がかかりそうだと判断し、無回答のまま次の問題へ進んだ受験生も少なからずいたようです。
〔問題2〕条件をもとに計算を行い、求め方を説明する問題
条件を正しく読み取り、(L)と(㎤)の単位換算を正しく行えれば正答するのは平易でしたが、説明に苦戦している受験生が多く見られました。まずは、資料1の①で「水そうに入っている水の4割を水そうからぬく。」とあるので、水をぬいた後の水そうに入っている水の高さが12㎝になることを説明します。その後、②で「水かえ後の水そうの内の高さは、21㎝以上、25㎝以下」とあるので、その条件を満たすには水がどのくらい必要かを求められれば必要なペットボトルの本数を導き出すことができます。また、水かえ後の水そう内の水の高さが何㎝増えるのかも求めることができるので、あとは前後の流れを意識して説明を書き進める必要がありました。出題された3問の中では最も取り組みにくい問題でしたが、条件をもとに正しく計算できれば十分に正答できる難度でした。
〔問題3〕情報をもとに2つのダイヤルの並びを考える問題
資料2の①~⑦の情報をもとに、青色と赤色のカギのダイヤルの並びを考えていく問題です。まずは④~⑦の情報から青色のカギの三つの数の積が□5、赤色のカギの三つの数の積が□8になることに気づかなければなりません。青色のカギの三つの数をABC、赤色のカギの三つの数をDEFとすると、A×B×C=□5よりA・B・Cはいずれも奇数でそのうち一つは5つであることがわかりますが、③の情報で1が一つも使われていないことに気付くことができるかがポイントになりました。ここまで求められていた受験生は正答率が高かったですが、条件を一つでも読み落としてしまうと正解にたどり着けないため、合否を分けた一問でした。
2⃣製品のリユースやリサイクルについて考える問題(共同作成)
令和3年度から引き続き小問2問の構成ですが、〔問題1]は、(1)と(2)に分かれており、(1)では割合の計算が出題されました。
共同作成問題の適性検査日大問2で割合の計算が出題されたのは、平成30年度以来です。大問全体の話題はリュースやリサイクルといった循環型社会に関するもので、受検生にとっては見慣れたテーマでしょう。また、会話文や資料は標準的で取り組みやすい内容であったため、2問とも正解するべき問といえます。解答に必要な要素を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現することが大切でした。
〔問題1〕割合を計算し、資料を比較して分析する問題
(1)は、図2または図3から選択した資料における循環利用率を計算したうえで、その結果が衣服の循環利用率と比較してどちらが高いかを答える問題でした。計算自体はどちらを選択しても3桁÷3桁と平易な割合の計算なので、確実に正解したい1問と言えます。ただし、ここでの選択は(2)にも関わるため、ただここを速く確実に解くだけでなく、そちらも見据えての選択をしておきたい1問でした。
(2)は、製品ごとの循環利用における特徴を比較し、共通点と異なる点を説明する問題でした。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、5年連続の出題となりました。問題の条件から、「ペットボトルと~の循環利用の共通点は~であり、異なる点は~である。」といった解答の枠を作り、必要な情報を読み取って完成させると解きやすいでしょう。共通点はペットボトル(図2)を選んでも、紙(図3)を選んでも自明ですが、異なる点は紙の方が答えやすかったため、(1)を解く時点で、こちらまで目を配っておく視野の広さがある受検生は、多少なりここで時問を節約できたでしょう。
〔問題2〕複数の資料を組み合わせて説明する問題
衣服の循環利用率を高める取り組みによって、消費者の意識や行動がどのように変化して循環利用率が高まるのかを説明する問題でした。[問題1](2)と同様に、解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は6年連統の出題となりました。この問題を正解する一番のポイントは、花子さんの「循環利用率を高める意識や行動もあれば、そうでないものもあります。」というセリフです。この観点で図4、図5、図6を見ると、無計画な服の購入、まだ着られる衣服を可燃ごみとして捨ててしまう、などが「そうでない」意識や行動であることが分かります。そして、その上でカードを見ると、そういった問題点を改善し、図4、図5、図6の「循環利用率を高める意識や行動」に当たるものへ導いていることが分かります。例年通りの都立中適性検査文系の、セオリー通りの解法が身についているか否かで正否が分かれる一問でした。
3⃣シャボン玉の性質について考える問題(共同作成問題)
近年の傾向通りの問題でしたが、例年よりも会話文が少なくなり、実験の手順の説明が詳細化されました。問題文中の表現も含めると、これまでであれば実験結果の着眼点を示唆するだけであったものが、それに加えて検証の仕方まで示唆されるものとなっており、大幅に解きやすくなったと言えます。しかし、思い込みなしに丁寧に問題文を読み取らないと、読み取り方が問違いやすい箇所があり、落ち着いて処理できたかどうかが重要でした。共同作成の適性検査山は、算数系の大問1の方が難度の高い年度と、理科系の大問3の方が難度の高い年度があります。今年度は解答の記述量の面で、大問3の方が難度が高かったと言えるでしょう。適性検査全体の難度が例年よりも易化したことと合わせて考えると、学校によっては合否の決め手となる大問と言えます。なお、シャボン玉とその体積、割れ方などを題材とした問題は後期日曜特訓第14回の適性検査I大問3と同一でした。このため、enaの後期日曜特訓を受講している多くの受検生は、大変取り組みやすい問題だったと言えます。
〔問題1〕シャポン玉の割れやすさに関する問題
シャポン玉は砂糖水から作ると割れにくい、ということについて、望ましい濃度を探る実験についての問題でした。食器用洗前、濃度、などのキーワードは、令和4年度の問題を考様させます。あくまで題材の近さであり、問われているものは異なりますが、問われているものを正しく読み取ると、実は令和6年度の(問題1)ととても似ています。条件を1つ変化させた実験2つの結果をふまえて答えを出す、結果をただまとめるだけでなく、その内容を換言する一手問がある、という特徴が踏題されています。そのため、近年の過去開をしっかり解きこんでいった受検生にとっては解きやすい一問でしたが、完全に正解した受検生はそこまで多くないと思われます。鍵となるのは前述の「換言」で、問われているのはシャポン玉の「体様」の比較ですが、資料には体積ではなく、空気入れを押した回数がまとめられています。「回数が多い→シャボン玉に入れられた空気が多い→体積が大きい」という置き換えを正しく説明しきれているかどうかが記述のポイントになります。こういった問題で点数を取り切れるように、過去問の演習をする際には、ただその問題を例題として扱うのではなく、肝となる部分はどこか、を意識して行うとよいでしょう。
〔問題2〕シャボン玉の時問経過による割れ方に関する問題
時問経過により、シャボン玉のまくをつくる液が徐々に下部にたまっていき、薄くなった上部から割れていくことについての実験結果の考察を答える問題です。実験の手順と結果は大変分かりやすく示されており、結果に対しての考察の検証をする実験まで行っていますから、現象についての理解は平易でした。そのため、この問題における得点の差は、問題文の条件通りに解答を作ることができているかどうかによるものが大きいでしょう。適性検査の問題文としての正しい読み取り方をすると、解答には4つの要素を入れなければなりません。それを正しい言語表現でまとめられたかどうかが重要でした。特に、前述の日曜特訓の問題で、現象(時問経過により、シャボン玉の液が下へいくことで、上部がうすくなり割れる)について問うほぼ同一のものを経験していますから、enaで日曜特訓を受講している受検生には特に解きやすい一問であったと言えます。
〈文章・出典〉
文章A 長田弘「読書から始まる」による
文章B ドミニク・チェン「未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために」による
〈出題形式〉
出題形式は前年度と同様、文章が2つあり、それぞれから読み取る問題が2題と、四百字以上五百字以内で書く作文問題1題の構成でした。文章量は前年度より若干少なく、どちらも30行程度でした。ただし〔問題1〕と〔問題2〕の出題形式は大きく変化しました。前々年度から続いていた具体例について記述する問題ではなく、文章中の言葉を指定された穴埋め形式で言いかえる問題が出題されました。
〔問題1〕文章内容を指定された式に合うように説明する記述問題
文章Aで「人は言葉でできている」と述べていることを「人は言葉でできているとは、( ) ということ」の ( )にあてはまるように文章Aをふまえて四十五字以上十字以内で答える問題です。非常に難しい問題でした。直前の段落を読むだけでは答えが出ません。一番最初の段落の「まず言葉があって、自分があって、そして人がいる」というふうに思っている」に気が付くことが重要です。三段落目からの「自分が生まれる前から古くて長い時間を持っていた言葉を覚えて、人は大人に、人間になってゆく。そして覚えるだけではなくて、言葉を使うことによって生まれる他者とのつながりの中に自分の位置を確かめていく。だから人は言葉でできているのだ」という文脈をとらえて、なおかつそれを六十字以内で記述するのは限られた時間内ではかなり難しかったはずです。
〔問題2〕文章内容を指定された形式に合うように説明する記述問題
文章Bでは「翻訳とはどのようなことか」と言っているかを説明する問題です。「翻訳とはある国の言葉や文を、ほかの国の言葉や文に単純にかえることではなく、( ) 」と書く問題で ( )にあてはまる内容を六十字以上七十字以内で答えます。〔問題1〕よりは平易ですが、答えを探すには工夫が必要です。三段落目の「ある人が任意の言語で話している時、その人は自分の体験を通じて感じたことを、相手の知っている言葉に「翻訳」して話している」に注目しましょう。これで「翻訳」とはある言語から他の言語におきかえることではなく、同じ言語どうしでも「自分の体験」を相手に話すことであるとわかります。さらに相手の知っている言語に翻訳して伝えても常にこぼれ落ちる意味があり、お互いのわかりあえなさをつなぐために翻訳の技術と経験を受け継いでいる、と述べています。したがって「」には「体験を通じて感じたことをお互いのわかりあえなさをつなぐために相手の知っている言葉にすること」といった内容になります。〔問題1〕、〔問題2〕ともに傍線部の周囲を読んだだけでは答えを導き出すことはできず、文章全体をふまえて答える必要があります。文章を正確に読み、要約する力が求められています。
〔問題3〕それぞれの文章の内容をふまえて作文を書く問題
2つの文章を読み、「言葉」を学ぶこととはどのようなものだと考えるか、また今後の学校生活において、どのように「言葉」に向き合い、他者と関わりたいかをそれぞれの文章の内容をふまえて100年以上500字以内で自分の考えをまとめる問題です。文章Aは「人は言葉を覚えて人間になり、その言葉を使うことによって、他者とのつながりができて、つながりの中に自分を確立させる」という主旨です。文章Bでは「人は自分の体験を通じて感じたことを相手の知っている言葉に「翻訳」して話しているが、それはお互いの「わからなさをつなぐため」であると述べています。この2つをふまえると、「言葉」を学ぶこととは自分が生まれるずっと前から存在していた言葉を学ぶことで自分を作り上げることであり、またお互いにわかりあえないことを理解することである、ことになるでしょう。したがって「言楽」には常にこぼれおちる意味があることを知ったうえで、注意して真剣に向き合い、異なる価値観を持つ他者であっても新たな関係性を持てるよう関わりたい、という方向性が望ましいでしょう。またこの意見に説得力をもたせるために具体例や体験もまじえて書けたかどうかも大きなポイントです。
出題形式
1⃣は桜修館中の独自作成問題で、前年度同様に小問3問構成で算数分野からの出題でした。2⃣3⃣は共同作成問題です。
1⃣ 百人一首を使った競技かるたの総当たり戦を題材とし、与えられた条件をもとに、面積を比較する・整理して考える・組み合わせを見つける問題
前々年度から3年連続で小問数が3つ、そのうち1問は記述問題が出題されました。〔問題2〕や 〔問題3〕は、答えが複数考えられる中で「考えられるもののうちの一つ」を答えさせる問題でしたので、限られた時間の中で条件に当てはまる答えを探し出す力が問われています。
〔問題1〕たたみを敷けるスペースとたたみ6枚分の面積を比較して説明する問題
会話文で与えられた条件をもとに、面積を比較して言葉と式を使って説明する問題です。教室の広さは「長い辺の長さは9m、短い辺の長さは7m」かつ「たたみを敷けるスペースは、教室の広さの3分の1」であることと、たたみの「短い辺の長さと長い辺の長さの比はどの地域でも1:2」かつ「今回借りるたたみの短い辺の長さは 92.5cm」という条件を読み取ることが必要です。それぞれの面積を計算する際に単位をそろえる必要があるということに注意しましょう。面積を正しく来めることができれば正解できる問題と言えます。記述問題で面積を決める問題は近年の桜修館中では出題されておりませんので、新傾向の問題と考えられます。
〔問題2〕条件を全て満たす6枚のたたみの敷き方を求める問題条件
②の「四角形の長い辺の長さと短い辺の長さの差が最も小さい」のは、3ます✕4ますあるいは4ます✕3ますで6枚のたたみを敷くときだとわかります。さらに条件③の「4枚のたたみの角が1か所に集まるような敷き方はできない」ことに気を付けてたたみの敷き方を考えることができれば解くことができました。この問題は確実に正解したい問題と言えます。
〔問題3〕競技かるたの総当たり戦の組み合わせを考え、「残り札数」の集計表を完成させる問題
〔対戦ルール)や〔順位の決め方]に書かれている条件を踏まえて自分で対象表と「残り札数」の集計表を完成させる問題でした。
「残り札数」とポイントの2種類の数が出てくるので、どの表に何の数字を書き入れればよいのかを正確に考える必要があり、表をすべて完成させることができなかった受験生も多かったのではないかと思います。
解くのに時間がかかると判断して後回しにするという選択も戦略的に行っても良かったのではないでしょうか。会話文中の「最も多い合計ポイントと、次に多い合計ポイントの差は1ポイント」という。おさむさんとさくらさんは合計ポイントは同じ」という条件からまずは合計ポイントの可能性を絞っていきましょう。
2⃣ 公共交通機関の利用について考える問題
令和3年度から引き続き小問2題の構成で、計算問題は出題されていません。大問全体の話題は、令和3年度から令和5年度までは3年連続で日本の産業を題材にした内容だったのに対し、今年度は令和2年度と同様に公共交通機関を題材にした内容となっていました。会話文や資料は過年度の適性検査問題と比較しても標準的な内容であり、設問も解答の見当をつけやすいため平易な問題といえます。解答の根拠になる部分を会話文や資料から適切に読み取ったうえで、問われていることに対しての答えをわかりやすく表現する力をみられる問題でした。
〔問題1〕グラフが示す数値の根拠を考察する問題
公共交通機関の利用客が航空機または鉄道に偏っている理由を、表1の所要時間と料金の観点から考察する問題です。解答に用いる資料を受検生に選択させる形式は、5年連続の出題となりました。図1より、AからBへの移動には航空機と鉄道がほぼ同じ割合で利用されているのに対し、AからCへの移動には航空機の利用合が非常に高く、AからDへの移動には鉄道の利用制合が非常に高いことが読み取れます。また、表1には、航空機と鉄道それぞれを利用して移動した場合の所要時間と料金が移動経路ごとに示されています。これらを関速させて考えると、人びとが公共交通機関を利用するときは、公共交通機関ごとの所要時間および料金の差をふまえて選択していると予想できます。なお、AからCとAからDはどちらを選択しても正解です。ただし、問題の条件より、いずれの場合もAからBの公共交通機関の利用割合と比べながら解答する必要があることに注意してください。問われていることもふまえて考えると、解答の若き方は「AからBの公共交通機関の利用合は~になっているのに対して、AからC(またはAからD)の公共交通機関の利用合は~になっている。その理由は、~からと考えられる。」といった表現が考えられるでしょう。
〔問題2〕複数の資料を組み合わせて説明する問題
「ふれあいタクシー」を導入することになった理由と、その効果について考えられることを、複数の資料と会話文から読み取って説明する問題です。ひとつの問題で解答すべき内容が複数ある形式は、4年連続の出題となりました。ただし、今年度は理由と効果を書く解答欄が分かれている形式の解答用紙だったため、受検生は例年と比較すると問いに正対して解答しやすかったものと思われます。会話文から、E町では路線バスの運行本数が減少しているなかで「ふれあいタクシー」を導入したことがわかります。また、利用者の90%近くが「ふれあいタクシー」に満足していることがわかります。これらの情報をもとにして、問題で指定された4種類の資料から読み取れる内容を、過不足なく組み込みながら説明するようにしましょう。今回は、表2、図2、表3が、それぞれの項目の推移を示す資料となっています。推移を読み取るときは、数値の大まかな変化の過程を読み取ることがポイントです。
3⃣ 摩擦に関する実験を題材とした問題
3⃣は、ここ3年は、小問2つにそれぞれ枝問が2つあり合計4問、という構成でした。しかし今年度は枝問が1つずつになり、合計2問構成となりました。実験の内容自体も比較的素直で読み取りやすいため、ここ数年では最も取り組みやすい難易度だったと言えます。題材としては、旅に関して調べる実験を行い、その結果を分析する問題でした。計算を必要とする問題はなくなり、読解力・考察力・記述力が試される構成となりました。どちらの問題も、内容理解はそれほど難しくないため、平均点は高くなると考えられます。しかし、満点解答を出すうえでは、問題で問われている内容を過不足なく盛り込んで解答する、答案作成力が必要な問題でした。
〔問題1〕素材の表面の状態の違いによる摩擦の大きさの違いを考える問題
ペットボトルのキャップにつけられたみぞの摩擦による効果を、モデル化して調べた実験についての問題です。実験の結果から、表面にみぞをつけることで、手でキャップを回すときにすべりにくくなると考えられる理由を説明する問題でした。ペットボトルのキャップを回すときのように、みぞの方向と力の方向が垂直なときには、動き出すのに必要なおもりの個数が多いことが、実験結果からわかります。 これが、ペットボトルのキャップを回すことを考えると、すべりにくいということに相当します。また、問題では「手でつかむ力が大きいときでも小さいときでも」とありますので、載せる金属の重さが 750g の場合と 1000gの場合の両方について記逃する必要があったと考えられます。このように、「手でつかむ力」を「のせる金属の重さ」に、「表面のみぞの方向が回す方向に対して垂直であるペットボトルのキャップ」を「糸に対して垂直にみぞをつけたプラスチックの板」に、「すべりにくさ」を「おもりの個数」に、それぞれモデル化した実験が行われていることを理解する必要がありました。
〔問題2〕斜面をすべり下りる物体の速さの違いを考える問題
会話文から、斜面をすべり下りる物体の速さについて、「物体が斜面に接する面積」、「物体の重さ」、「斜面に接する物体の素材」の3つの観点が挙げられ、これらの条件によってすべり下りる速さがどう変わるかを調べる実験についての問題です。6通りの条件で斜面をすべり下りるのにかかる時間を調べた実験の一部が隠されており、その中から結果が同じであると予想できる組み合わせを選び、そう考えた理由を説明する問題でした。この設問に対しての実験は2つ行われていますが、両方を通して、複数の条件によって変わる実験結果を考察する必要があります。そのため、対照実験の考えを用いた実験結果の読み取りと客作成が必要な問題でした。「実験2では同じでなかった条件のうち実験3では同じにした条件」については、そのことを意識して実験手順を読み取れば、「物体の重さ」であること自体は分かりやすいです。あとは、明らかになっている結果のうち、「斜面に接する物体の素材」が同じ場合には、すべり下りる時間も同じになっていることが分かれば、結果が同じになる組み合わせを選ぶことは、比較的やりやすかったと言えます。答案作成においても、「実験2では同じでなかった条件のうち実験3では同じにした条件は何であるかを示して」という指示を意識することが重要でした。
問題の形式は前年度と同様、文章が2つあり、それぞれから読み取る問題が2題と、400字以上500字以内で書く作文1題の構成でした。年々文章量が増える傾向にあり、作文問題のテーマや条件も含めて、共同作成により近づいた問題だったと言えるでしょう。 〔問題1〕はオーソドックスな読解問題ですが、〔問題2〕は具体例を用いて100字で説明する問題でした。具体例を用いながら説明するタイプの問題は前年度も出題されたので、桜修館中らしい問題だと言えるでしょう。どんな具体例を用いるのかは明確だったので、日ごろの練習量の差が点差として表れたのではないでしょうか。〔問題3〕は、2つの文章を読み、学校という場では、どのような学びがあると考えたか、また、今後の学校生活において、どのように学びに向き合いたいか、それぞれの文章の内容をふまえて400字以上 500字以内で自分の考えをまとめて書きます。段落同士の結び付け方が難しい問題でしたが、「学び」に関するテーマの作文は日曜特訓や合宿等でも触れており、しっかり書き直しや復習に取り組んできた生徒であれば立ち向かえた問題だったと思われます。
小問3つの出題構成でした。前年度の傾向を踏まえた出題傾向であり、前年同様に記述問題も出題されています。桜修館中の特徴の一つである、「論理的思考力」を求める問題が多く出題されています。〔問題1〕は、公園のパンフレットをもとに、体験活動の計画を立てる問題です。情報量は非常に多い問題でしたので、処理しきれない受検生もいましたが、複数の要素を同時に満たすように答えを絞っていくという、適性検査としては王道の問題でしたので、合格するためには正解しておきた一間でした。〔問題2〕は、「大」、「中」、「小」、の3種類のふん水から水が同時に出始める時刻を求める問題でした。「同時に」と書かれているので、表から3種類のふん水から水が出始めた時刻の周期を求めて、「大』、「中」、「小」それぞれ3つの数の最小公倍数を求めれば解くことができました。〔問題3〕は、周期をもとに一定時間における水の総量を求め、説明する問題ですが、現実的には合格者でも正答者は少なく、手を出さずにとばすという選択が現実的でした。