東京学芸大学附属国際中等教育学校

藤波 由衣

《答えてくれた先生》

藤波 由衣

東京学芸大学附属国際中等教育学校出身

Q1.この学校独自の特徴はどんなところですか?

A1.グローバルな学校です。生徒の多くが帰国生のため、英語と日本語が混じり合う学校生活です。また教育カリキュラムにおいても特殊なものが多いです。中学1年生から高校1年生までの4年間のIBバカロレア教育は、海外の教育に則っているためレポートやプレゼンが中心です。また、高校1年生からはイマージョン授業も選択可能で、複数科目が英語で開講されます。私も、数学の授業を英語で受けていました。第二外国語の授業も必修で、中国語、フランス語、スペイン語、韓国語、ドイツ語など様々な言語を学べます。
また、挑戦の機会を沢山与えてくれる学校です。クラスの黒板の隅や、廊下にはコンテストやイベント、ボランティアの掲示があり、積極的に参加する生徒がとても多いです。社会問題の解決プランを考案するSGH(スーパーグローバルハイスクール)、理数探究を行うSSH(スーパーサイエンスハイスクール)と呼ばれる研究の支援制度も整っているため、任意で研究を最長中学3年生から4年間続けることができます。これらを通じて、香港やカンボジアなど海外研修や国内の研修発表会のチャンスも得られるため、多くの生徒が自らチャレンジしています。
そして、とても自由な学校です。校則がないため、髪の毛を染める、ピアスを開ける生徒もとても多いです。飲食持ち込みに関する校則もありません。その分、自己管理、自己責任が重要になります。授業中に帽子やコートを着用していたり、スマホを触っていても注意されることはないため、自分でマナーや節度を意識する必要があります。自己管理が必要なのは学びの面においても同じです。挑戦の機会は与えてくれますが、強制されない分、自分でチャンスを掴みに行く必要があります。周りの挑戦を見ているだけで6年間が過ぎるということもあり得ます。

Q2.学校の設備はどうでしたか?

A2.こじんまりとしていて落ち着く雰囲気です。私立と比較すると、充実しているとは言えません。売店が無い、と言う点も残念です。ですが、普段のお昼は中庭の芝生で友達とご飯をピクニック気分で食べることができます。また、テニスコート、校庭、プール、体育館があるため、スポーツはどれも授業で楽しめます。

Q3.学校の先生たちはどんな印象ですか?

A3.基本的には生徒が主体でさまざまな企画を考えて、先生方はそれを後押ししてくださいます。例えば、学校外のイベントや研修で学んできたことや成果を学年の仲間に共有したいという生徒が、先生に授業の中で時間を作ってもらえるようにお願いをするということも多々あります。

Q4.進路相談や受験フォローの体制は充実していますか?

A4.進路相談は、積極的に先生に尋ねるとフォローしてくれます。生徒の3/4ほどが推薦入試を受け、一般入試を目標にする生徒は少数のため、一般入試向けの受験指導はあまりされていません。学校の合格実績を見て、一般入試向けの勉強をしなくても何とかなるという安心感を持ってしまう生徒も多いですが、実際に難関大学に推薦合格する生徒は英語にアドバンテージのある帰国生がほとんどというのが現実です。
高校3年の秋以降も学校行事が多く、1月末日まで授業があるなど、一般入試を目指す生徒にとっては厳しいスケジュールです。
私立と比べて模試の開始時期が遅かったり、回数も少なかったりと、自分の学力を客観的に知る機会がとても少ないです。学校の授業も、共通テストの試験範囲が一月にようやく終わるなど、どの科目も一般入試を目指すには進度はかなり遅いです。学校の成績はテストよりもレポートやプレゼンに比重が傾く傾向があるため、日本の大学の一般入試向けの勉強、つまり机に向かって問題集を解くという勉強は普段から重要視されていません。一般入試を考えている生徒は、塾に早めに通うことになります。
推薦入試組は秋には合格がわかり、卒業まで賑やかに学校生活を過ごす生徒が多い中、一般入試を目指すとなると、直前期にいかに集中力と冷静さを保てるかが大事になります。

Q5.生徒たちはどんな雰囲気ですか?

A5.全般的に海外の価値観、海外志向がとても強いです。
帰国生が多く、日常会話で英語が飛び交っています。また、言語の面だけでなく、価値観も多様で、他人の目を気にせず自分の考えを大事にする人が多く、躊躇せずに意見をはっきり言います。その分、多様な価値観への理解も高く、人の意見を否定したり、常識に囚われるということが嫌いな生徒が多いです。
自主性、行動力、コミュニケーション力がとても高く、常にアンテナを張って6年間の時間で多くのことにチャレンジします。学校がくれる機会のみならず、自ら探したコンテストやイベントに参加したり、外部と関わり大きな成果を残して表彰されたり、組織を立ち上げて活動する生徒が沢山いて、常に刺激をもらえます。社会問題への意識がとても高く、自ら課題解決の案を形にして、発信活動を行っている場合も多いです。ボランティアに対しても非常に積極的で、年に3つほど多くの生徒が参加する外部の大きなボランティアイベントもあります。
学習だけに限らず、何に対しても、とても熱心で、活発で、とてもノリが良いです。ハロウィンの仮装やドレスで踊るプロムなども生徒が毎年、自ら計画して学校外で集まります。恥ずかしがったり、ビビるということがあまりなく、はじめに日本の文化や価値観にとらわれていると衝撃的なことも沢山あります。
そして、上下関係が薄いのも特徴です。中学1年生から高校3年生まで、関わる機会がとても多く、学年を越えて仲がとても良いです。逆に言うと、礼儀や敬語を学ぶ機会が学校内ではないため、常識はずれにならないよう、自分で礼儀作法を学ぶ必要があります。

Q6.学校周辺はどんな様子ですか? おすすめスポットはありますか?

A6.駅近くに大型のモールが複数あるため、放課後はモール内のレストランやカフェでグループワークをする生徒も多いです。また、駅前のファミリーマートとスターバックスの利用率がとても高く、部活帰りの生徒がよく集まっていました。

Q7.学校生活で楽しかった行事を教えてください。

A7.スポーツフェスティバルが一年の中で最も盛り上がる行事です。中学2年生から高校3年生までは、各クラスでお揃いのTシャツを作って本番で着用します。また、最も特徴的なのが、ほとんどの人が髪をクラスカラーに染めるという点です。スポフェスの1週間前になると、クラスのほとんどの人がブリーチで金髪になり、前日には色を入れて皆、頭が揃って派手な色になります。この学校の生徒は、何事に対しても本気で全力で取り組みます。特に高校3年生が、代々どのイベントでも熱く盛り上げてくれて、ハロウィーンの仮装やプロムなど、海外のノリやイベントが沢山あり、とても楽しいです。

Q8.部活動はどんな様子ですか?

A8.部活動に力を入れている学校とは言えません。特に、文化部は活動が活発ではなく、比較的、運動部の方が積極的に大会にも出場しています。水泳部はスクールフェスティバルでシンクロナイズドスイミングを披露して盛り上がります。多くの部活が中学1年生から高校3年生まで一緒に活動しており、上下関係や顧問の管理が厳しくないことから、縦のつながりがとても深く、勉強や研究など自分のやりたいこととの両立がしやすいです。本気で部活動に打ち込みたい方は、大会への出場機会が多い陸上部、サッカー部、テニス部などがお勧めです。

Q9.学校生活で苦労したこと、大変だったことはなんですか?

A9.英語やICTスキルの習得です。入学直後は、あまりにも英語が日常会話で飛び交う雰囲気に圧倒され、とても動揺しました。突然英語で話しかけられることも日常茶飯事で、どこに行っても英語が聞こえてきます。また、学校が機会をくれる海外研修など、多くの場面で英語にアドバンテージのある帰国生との枠争いをしなければならないため、色々なチャンスを自分のものにするためにも、自分だけのスキルを伸ばしたり、当然、英語も話せるようになるまで毎日必死で練習しました。また、中学1年生から、普段の授業の課題で当たり前のようにプレゼン、レポートが課され、タイピングすらままならない頃は、夜遅くまでパソコンと睨めっこしていました。
また、海外の価値観が強く、日本で育ってきた生徒にとっては価値観を受け入れ、変えるのにとても苦労すると思います。思っていることを強く主張しない、他人にどう思われるか考えるなどの思い込みが強い生徒にとっては特に、学校生活で起こること一つ一つ受け入れることが大変です。自分が持つ当たり前の考えや価値観が大きく変わっていく過程、いかざるを得ない過程で、自分の視野の狭さを実感させられたり、あるいは帰国生との間で、英語などのスキル面においても劣等感を感じたりすることもあります。
課題の形式やクラスメートの多様性など全般的に、小学校までの生活や価値観がかなり大きく変わる学校ですので、慣れるまでは精神的にとてもハードで葛藤することも多いです。しかし多くの修羅場を経験した分、大きく成長できます。

Q10.卒業後も同級生たちと交友はありますか?

A10.卒業後もクラスや学年問わず、皆仲良くしている印象です。海外の大学に進学する人も多いため、実際に会うことは難しいですが、SNSでの交流もとても活発で、同じ学校の人であれば必ず繋がるほどに、卒業後も学校内の生徒全体のコミュニティが充実しています。

☆志望しているみなさんへのひとこと

学大国際中の生徒は、多様なバックグラウンドを持つ仲間たちを受け入れ、共に学び、様々な社会問題に対して自分なりに行動を起こすことを大切にしており、同時にそれを求められています。受験においても、多様性への理解、社会問題への関心、自分の考えをしっかりと持つこと、この3つが特に求められます。日本のニュースでは取り上げられにくい社会問題からSDGsなどの広く普及している言葉まで、認知するだけでなく、自分は解決のために何ができるのか、言語化する練習をしておくと焦らず本番に臨めると思います。正解よりも、身の回りや社会の中のたくさんの問いを探してみてください! そして、最後の1秒まで自分の考えを必死に、存分に伝えてきてください!皆さんの努力が実を結びますように。応援しています!

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